アンジェリーナ・ジョリーの選択は正しかったか?

シネマトゥデイ』の記事によると、女優のアンジェリーナ・
ジョリーが、予防的乳房切除手術を受けていた。アンジーの母
親が10年近く闘病生活を送った後、56歳の若さで死去しており、
遺伝子検査の結果、娘のアンジーも87パーセントの確率で乳がん
に、50パーセントの確率で卵巣がんになることが明らかになった
という。

そのため、アンジーは手術を受けることを決断。今年2月より開始
した一連の治療は約3か月にわたり、先月27日に無事終了。インプ
ラント技術の発展により、術後のアンジーの乳房は外見には以前
とほとんど変わっておらず、乳がんになる確率も87パーセントから
5パーセントにまで抑えられることになったとのこと。

アンジーは公表に踏み切った理由について、「がんになることに
おびえて暮らしている女性はたくさんいます。そうした人に、もし
がんになる危険性がある場合は、乳房切除手術という選択肢がある
ことを知ってもらいたかったのです」と説明している。


近藤誠さんの「『余命3ヶ月』のウソ」(ベスト新書)を読んだ
ばかりだったので、アンジーの判断と対応にとても違和感を抱いた。
彼女は本当にがんを知っていて、最も的確な判断をしたのか、と。


がんは外からやってくるものではない。自分の体の細胞の一種だ。
正常な細胞の生成過程でエラーが起こり、それが拡大成長したもの
だ。エラーがいつごろどういうタイミングで起こるかはわからない。
それが致命的ながんになるエラーなのか、がんもどきであっても
問題ないものなのかも、最初はわからない。予防なんてできるの
だろうか。


がんの存在を確認できたとき、がんはすでに転移している。だと
すると、見えているがんやその周辺を切除したところで、すでに
結論(がんで数年後に死ぬか、がんもどきで手術は必要なかった
か)は出ている。問題は解決しない。
アンジーのした予防的手術は本当はもともと必要なかったかもし
れないし、すでに手遅れだったかもしれない。予防的手術をした
ことで、体力を落としたり、感染症に罹患したりということもある
だろう。


アンジーが予防的手術を受けることにした動機は、母親のがん闘病
の印象が大きいのかもしれない。母親の闘病の実情がどのような
ものだったかわからないが、多種の抗がん剤を大量に投与され、
人体実験をされて、亡くなったのだとすれば、その治療法がまちがえ
ていたのであって、放置療法がまちがえである根拠にはならない。
アンジーは身近にがん患者を観てしまったために、却って判断を
誤ったかもしれない。