真央ちゃんから魔王へ

 昨日の浅田真央のスケートにはだれもが、「これが、あの真央ちゃんなのか?」と。
最初に躓いても何とか立て直すに違いない。そして彼女なりの得点になるだろう。
だれもがそう思った。しかし、今回に限ってそうはならなかった。真央ちゃんは
金縛りにあったかのようにいいとこなし。

 16位。あまりにも低い順位。もう金メダルはない。
 彼女は何のために明日、滑るのか。

 ショートプログラムが終わった瞬間から今日までの間に彼女はどうなるのか、どう
するのか、立て直しができるのか。フリープログラムに向き合えるのか。真央ちゃん
ファンならずとも、心配になる。

 そして、今日。
 リンクに入って来た真央ちゃんの雰囲気が昨日と全くちがう。力んでいるわけではなく、
どこか全体的に力強い感じがする。昨日の今日だし、見まちがいかな、と思う。が、
最初の連続3回転を危なげなくこなす姿には安定感があった。最後まで行ける。その後は
途中で弱々しくなることなく、最後まで力強く滑り切った。
 お見事!これこそ、浅田真央

 演技が終わった瞬間の、くしゃくしゃ顔。滑り切ってくれた自分に、「今日は本当に
最後までがんばってくれてありがとう」とお礼をしていたのかもしれない。
 そのままの顔で会場に来ている人たちへの挨拶になってしまうのかと思ったら、瞬間に
して、しっかり笑顔に変わっていた。この変わり身に驚いた。
 しかも、その笑顔はこれまでのどこかにひ弱さが潜んでいるような真央ちゃんの笑顔では
なく、何が起こっても立ち向かう逃げない逞しい真央(魔王)になっていた。

 結果の得点からすれば、彼女は順調に滑れたとしても、ソトニコワの得点には届かなかった
かもしれない。
 しかし、自分を16位から6位に駆け上がらせた力はすごい。驚くばかりだ。これこそが
彼女が4年間積み重ねて来た成果だったのだ。それを彼女は世界中に見せつけた。彼女は、
確かに、だれも獲得できなかった金メダルを手に入れたのだ。

 だから、だれもが彼女に感動したのだ。
 本当におめでとう。