週刊文春の書評

 今週号の『週刊文春』の書評コーナーで、高田昌幸『真実 新聞が
警察に跪いた日』
を紹介している。

 内容はすさまじい。まるで警察小説。しかし、評者の坂上遼氏も書い
ているように、「「道警小説」ではない。これは実話である。」。ほとんど
の登場人物が実名。一部には実名になっていない記者もいるが、それ
には高田氏のそれなりの配慮がある。

 まだ、この本を読んでいない人のために、書評を引用する形で、ちょ
っと紹介。

 ≪社内会議の模様は報道本部長や道警記者クラブキャップによって
 道警OBへ筒抜けになる。そこには仲間の栄誉を褒め称える度量もな
  く、仕事でやり返せる実力もない輩(やから)たちの情けないほどの
  嫉(そね)み、妬(ねた)み、恨みつらみが見て取れる。〈おまえら地獄
  に落ちろって
〉――これが道警キャップの言葉である。キャップはさら
  に〈高田をロンドンから引き戻してやっつけてほしい。新聞協会賞も
  返させればいい。提訴は早いほど効果が高い
〉と名誉棄損で訴える
  ように道警OBを唆(そそのか)す。元公安警察官の手のひらで転が
  された報道本部長、道警キャップらの背信行為は皮肉にも裁判証拠
  資料〈甲84号証〉によって露呈する。≫

 甲84号証は、佐々木友善氏が名誉毀損訴訟の証拠として提出した文
書で、佐々木氏が報道本部長や道警記者クラブキャップなどとの密談を
録音し反訳したものだ。だから、内容は実に生々しい。

 そこには、北海道警察本部の捜査費裏金問題を徹底的に追及した、社
の内外に誇るべき記者たちに対する北海道新聞社の内部の人たちの反
応の異常ぶりが露骨に出ている。
 ・・・会社に居場所を失った高田氏は北海道新聞社を去った。

 しかし、この書は北海道新聞憎しで書いた暴露本などではない。余りに
もリアルに書かれているだけに、最初は「暴露本か?」と疑う読者もいる
かもしれない。それをさらに読み進むうちに、「これは道新だけのことを書
いているのではない」ということに気づくはずだ。どこの社でも起こり得る
「事件」ではないかという気がしてくるのだ。そう。この本は、いま目の前
にある危機を訴えているのだ。

 評者の坂上氏も次のように指摘する。
 ≪ジャーナリズムの機能のひとつに「権力監視」がある。この作品を「
 ジャーナリズムを放棄した北海道新聞」として読むのではなく、同様の
 ことが日本の企業ジャーナリズム、いや企業そのものに巣食うているこ
 とを再認識すべきであろう。≫