秘密保護法に関する質問事項(2)

 諮問会議事務局からの初回の回答(説明)に対して今年3月末に出して
いた質問事項です。

 秘密漏えい事件の刑事裁判において外形立証の方法が「通例」だと説
明しているが、これまでの秘密漏えい事件の判決をみるかぎり、常に外
形立証が採用されて来たとは考えらない。「通例」と判断する根拠を明ら
かにされたい。公開裁判の原則と被告人の防御権の保障の観点からす
ると、外形立証がこれらと両立し得るかぎりにおいて許容され得ると解す
べきではないか。

 本法では漏えいのみを重大視し、漏えいの危険という観点から適性評
価を行い、漏えい関連行為に限って重罰で臨むことにしているが、秘密
情報の改ざんや破壊を漏えいと同じように問題にしないのはなぜか。
 刑罰は事後処理に過ぎない。捜査にも裁判にも膨大な時間や費用や手
間などがかかる。外国からの不正侵入には刑罰で対応するのはほとんど
不可能である。刑罰で子どもの不正行為を抑制できるか疑問である。高
度通信ネットワーク社会における情報の拡散の容易さと速さを危惧する
のであれば、情報管理の適正化(厳格化、迅速化など)こそが最優先に
実行されるべきなのではないか。
 外国政府等との情報共有は共通課題に取り組む場合、必要なことであ
る。しかし、ごく一部の国の政府だけと情報共有の密度を著しく高め、他
の国々の政府とは低くし、あるいは著しく低くするようなことをしてしまう
と、前者とは親密な関係になれる可能性があるが、後者とは対立関係を
深めることになる。日本政府としては外国との敵対関係や緊張関係をな
るべく作らないようにすることが、防衛戦略面からも経済活動面からも望
ましいことではないか。そうだとすれば、様々な関わり方を持つ諸外国そ
れぞれとどのような情報共有の仕方をすればよいかという問題になるの
ではないか。

 物理的管理はルールを作るだけでなく遵守されなければならない。ル
ールが遵守されていることを確認する仕組みが必要であるし、ルール違
反を速やかに発見し速やかに是正させる必要がある。これが的確に行わ
れるなら、漏えい、改ざん、消滅などの事件が起こりにくくなる。防衛省
外務省、警察庁ではこれまでどのようにしてきたのか。制度上、運用上
問題点があるか。これまでと異なる仕組みにした方がよいか。

 防衛省の秘密情報は公文書管理法第3条の規定に基づき公文書管理
法の規定によらず自衛隊法施行令等により管理されてきたが、公文書管
理法第3条の規定をこのまま残すと、いつの間にか政令等で公文書管理
法の規定によらない管理を可能にしてしまうのではないか。公文書管理
法第3条の規定の廃止あるいは改正を検討しているか。

 公益通報として保護されるということは、第23条該当行為について違法
阻却を認めるということである。公益通報は、組織内において違法ないし
著しく不当なことが行われていることに対して、自浄能力による改善が期
待できないと公益通報者が判断した局面で行われる。ところが、公益通報
者保護法の定義する公益通報は、労務提供先や、当該通報対象事実に
ついて処分や勧告等をする権限を有する行政機関又はその者に対し当該
通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大
を防止するために必要であると認められる者に対して行うべきものと限定
されている(第2条第1項)。これでは、公益通報しようとする者は、当該
組織の者に知られないで公益通報することができない。また、「通報対象
事実」も限定されている(第2条第3項)から、公益通報できない場合が出
て来る可能性がある。公益通報者保護法で対応するのはむずかしいので
はないか。特別な法制度が必要になるのではないか。

 日本の裁判実務は、刑事裁判でも国賠訴訟でも、裁判官の思考は「疑
わしきは警察・検察の利益に」の傾向が顕著である。立法過程で処罰規
定の運用の慎重を強調しても、また、政府答弁で条文解釈について説明
しても、裁判官は立法過程の議論に拘束されないという認識の下に、条
文の文言がどのように読めるかで解釈当てはめをしてしまう。「その他の
特定秘密を保有する者の管理を害する行為」は、刑事裁判実務では際限
なく広がるおそれがある。絞り込みが必要である。マイナンバー法にも同
様の規定があるというのは第70条第1項の規定を指していると考えられ
るが、そこでの法定刑は3年以下の懲役又は150万円以下の罰金であ
り、法定刑の重さが全く異なる。どちらの規定の仕方も曖昧であり罪刑法
定主義の観点から問題ではないか。

 ツワネ原則はそれ自体に法的拘束力はないが、各国、各地域が自らの
制度の中に取り込むべき事項を提案しているものである。「大きく逸脱し
ているものではない」かどうかではなく、これからの世界情勢を考慮して
取り入れられる事項、取り入れるべき事項は取り入れるという考え方でよ
いか。