職質の警察官3人が刺された事件から考えるべきこと

 時事通信 5月24日(土)8時35分配信の記事

 23日午後10時35分ごろ、東京都江戸川区北小岩の駐車場で、警察官3人
が車の後輪2本をパンクさせて逃走しようとした男に職務質問したところ、男は
突然暴れだし、刃渡り約12センチのくり小刀で3人を次々と刺した。警視庁小
岩署は、公務執行妨害容疑で男を現行犯逮捕。刺された女性巡査長(30)
が左腕を貫通するけがをしたほか、男性警部補(56)と男性巡査部長(33)
も足や腹部を刺され軽傷を負った。
 同署によると、逮捕されたのは板橋区仲宿の建築業の男性(70)。「記憶が
ありません」と容疑を否認しているという。

 70歳の高齢者に対して、3人の警察官(56歳、33歳、30歳)が立ち向かっ
て、3人とも男の小刀で受傷。大ごとだ。

 男性は、車の後輪2本をパンクさせて逃走しようとしていたというのだから、
現行犯逮捕の要件を充たしている。警察官が捕まえようとするのは当然だ。
 しかし、この記事からすると、警察官が3人とも怪我をした経緯がわからな
い。
 警察官らは、男性が車の後輪2本をパンクさせて逃走しようとしていたとこ
ろを現認しているようだから、男性が何らかの刃物を携帯していることを最
初から知っている。男性がその刃物で自分たちに切りかかってくることを当然、
想定したはずだ。
 心の準備だけでなく、警察官らの装備として、3人は防刃衣を着ていたほか、
警棒やけん銃を携帯していたはずだ。

 それなのに、なぜ?
 けん銃を撃って威嚇したり怪我をさせることは過剰な対抗だったかもしれな
いが、警棒でくり小刀を持っている手を強く打ってくり小刀を叩き落として取り
上げることは、男性に怪我を負わせることになるが、当然、許される。
 記事からは、男性と対峙した時点から警棒で対抗したかどうかがわからな
い。3人も怪我をしていることからすると、少なくとも対峙した当初は警棒を手
に持っていつでも叩き落せるように準備していなかったのではないか。
 3対1という対立関係だったため、警察官らは自分たちの方が力の面で確実
に優位にあると考え、男性が自分たちを襲って来るという緊張感が欠けてい
たのではないか。3人のうち1人でも少しでも怪我をしてはいけないのだ。3対
1だから優位、と考えるべきではない。

 腹部を刺された警察官もいるようだが、現場の警察官に着用を義務づけら
れている防刃衣を着ていなかったのか。着ていたのに、防刃衣でカバーされ
ない部分を刺されたのか。
 義務づけられている防刃衣は、実際には、現場の警察官にほとんど役に立
たない。むしろ文字どおりお荷物だ。
外見はベストで、身体のうちカバーする
範囲は少ないから、カバーしていない身体部分を守ることはできない。
 女性警察官は左腕を貫通する怪我を負ったとのことだから、防刃衣を着て
いたとしても、避けられなかった怪我だ。
 しかも、防刃衣は重い。数キロの重さがあるそうだ。現場の警察官からの要
望に基づくものではない。いつの頃からか、日本の現場の警察官はこれを勤
務中ずっと着ることを義務づけられるようになった。腰痛の原因にもなってい
る。警察官の身体の動きを悪くさせる原因にもなっている。絶対的な上位下
達組織だから、現場の警察官は「役に立たない」「むしろ、健康を害するし、
仕事に邪魔だ」と、上に対して抗議できない。不合理を忍従する組織だから
こそ、今回のような事件が起こるべくして起こる。
 こんな防刃衣を全国の警察官に着用させているのだから、防刃衣を作って
いる会社はきっと大儲けだ。で、きっと、警察官僚の天下り先にはなっている
だろう。現場の警察官の健康の犠牲の上に天下り先が確保される?

 3人の警察官を怪我させた男性に対して、「とんでもないヤツだ」と怒ったり、
「危ないヤツだ」と思い、こういうヤツは刑務所に長く入れておいた方がいい、
なんていう感情論は意味がない。

 こういう事件はいつどこで起こるかわからない。そういう現場で仕事をして
いる警察官の身体生命の安全を守るためには、警察官3人が怪我をした経
緯を検証し、どこに対応ミスがあったかを解明し、全国の警察官に周知徹底
すべきだ。
 それは、警察官のためだけでなく、警察官のすぐ近くに事件の被害者がい
るような場合、被害者を逃がし、あるいは守るためにも必要なことだ。