ASKAの覚せい剤報道はおかしい

 CHAGE and ASKAASKA覚せい剤を以前から使用していたことが、週刊誌、
テレビ、新聞でも大きく報道されている。

 有名人だから、逮捕されたときに1回くらい報道されるのは仕方ない。しかし、実際
は、これでもか、これでもかというほど、飽きるほど報道されている。

 こんな報道はおかしい。
 覚せい剤使用事件は、弁護士にはちっとも珍しくない。日常的な刑事事件だ。何の
ために覚せい剤を使用するかも大体パターンが決まっている。ひとりでこっそり注射
している者もいるが、セックスの快楽を持続させるために覚せい剤を注射する者もか
なりいる。それが現実。弁護士は仕事柄、そういう現実を知っている、というだけのこ
と。だから、ASKAの使用目的はふつうであって、ちっとも珍しくない。

 覚せい剤の自己使用は、世の人々に実害を与えていない。被害者なき犯罪の一種
だ。世の人々が被害者として騒ぐ問題ではない。本人の身体を蝕み、生活、人生を壊
して行く。一種の自傷行為。本人こそが被害者だ。家族も深刻な被害を受ける。そう
いう種類の事件だ。

 覚せい剤を自己使用していた人について、赤の他人がとやかく突っ込みを入れるこ
とに何の意味があるのか。何の意味もない。それをあえて記事にするのは、人々の覗
き見趣味に付け込んだ、単なる売らんかな主義でしかない。
 こんなものにページ数を割くとき、そのページ数分だけ世の中の重大な事件は記事
にならないということだ。

 自分で覚せい剤をやらない人が覚せい剤に関心を持ってくれるのであれば、覚せい
剤を売る側の規制がどうなっているかという問題に関心を持ってほしい。
 上野でも横浜でも渋谷でも、私が担当した被疑者・被告人たちは、1万円分くらいを
買った直後に警察官に取り囲まれたり、職務質問を受けたりして、覚せい剤所持で現
行犯逮捕された。すぐ近くいた売人はだれも逮捕されなかった。覚せい剤の蔓延を防
ぐために、買う側と売る側、どっちの方を取り締まるべきか。はっきりしていると思うの
だが、どうも、警察と私の判断基準はちがうらしい。

 それから、ASKAが逮捕された直後からCHAGE and ASKAの曲が放送されなく
なったり、CDが店頭から消えたりしているらしい。こういう思考の深さを感じさせない
潔癖主義も胡散臭い。