沖縄密約文書訴訟 最高裁の判断は?

 昨日(7月7日)のNHKニュース。
 「昭和47年の沖縄返還の際に日本とアメリカが密約を交わしたとして元新聞記者などが
外交文書の公開などを求めていた裁判で、最高裁判所は今月14日に判決を言い渡すこと
を決めました。判断を変える際に必要な弁論が開かれないため、原告側の訴えを認めなか
った2審の判決が確定する見通しになりました。」

 元新聞記者は、当時、有罪判決を受けた西山太吉さん。

 「1審は、国に文書の公開と慰謝料の支払いを命じましたが、2審は3年前、密約があっ
たことは認めたものの「文書は廃棄された可能性が高い」として、訴えを退けていました。
この裁判で、最高裁判所は今月14日に判決を言い渡すことを決めました。」
 「判断を変える際に必要な弁論が開かれていないため、文書の公開を認めなかった2審
の判決が確定する見通しになりました。」

 だから、なに? 今朝の新聞記事をいくつかみても、何が問題なのか、書いている記者にわかっていない
ようだ。

 通常、最高裁が弁論を開かない場合は、突然、三行半の通知が送りつけられてくるだけ。
それでおしまい。それが、今回は、事前に判決言渡し日を伝えて来た。ということは、最高
裁は法廷で何かをやろうとしているということだ。
 それがどういうことなのかを知りたかったのに、どこもそのことを報道していない。

 で、原告の代理人は確か、知り合いのあの弁護士。と思いついて、「どういうこと?」と聞
いてみた。
 その返事が以下の文面。ご本人の了解を得て、転載させてもらうことにした。

 ≪しかし、7月14日に判決をするというので、敗訴が確定することは間違いありません。

 問題は、7月14日に言い渡される判決の中身です。
 決定文が、いくつかの上告受理申立理由から、1つだけを取り上げていますので、私は、
不開示処分にかかる文書の不存在の主張立証責任について、初めての最高裁判断がな
されると予測しています。

 【第1審・控訴審の枠組み】
 文書の不存在の主張立証責任は、原告にある。しかし、行政機関がいったん作成、保有
したことを原告が主張立証した場合には、文書が一定の管理下に置かれていることから、
処分時まで保有が継続していたことが事実上推認される。この事実上の推認を破るために
は、国が保有が失われたことについて主張立証する必要がある。

 控訴審は、この枠組みに立ちながら、密約を否定したいという意図を外務省が持っていた
と認定し、通常の場所ではなく、通常の管理方法ではなく保有されていた。だから事実上の
推認を及ばせることはできない。情報公開法施行前に廃棄された可能性が高い。等々を事
実認定しました。

 疑問点は、第1審・控訴審の枠組みを肯定するのであれば、上告受理を決定する必要性
はないはずです。ところが、上告を受理するというのですから、判決は、せっかく第1審・控
訴審が作った枠組みから、大きな後退をする可能性も含んでおり、その点だけが気がかり
です。一方で、重要な法令解釈として、第1審・控訴審オーソライズするという選択もあり
うるでしょう。≫

 文書不存在についての立証責任について、最高裁が新たな判断基準を示すとすれば、そ
れは今後の情報公開制度の運用にきわめて重大な影響を与える。
この点こそ、マスコミは
力を入れて報道してほしい。