盗品「鉄人28号」が見つかった経過とその後

 朝日新聞デジタル 8月19日(火)6時43分配信の記事によると、東京・中野の古書店まんだらけ」で、
ブリキ製玩具「鉄人28号」(販売価格27万円)を盗んだらしい人物(50歳の男性)が逮捕された。

 ≪男は「ショーケースのガラス戸が少し開いていたので盗んだ。売って金にしようと思った」と容疑を認
めている、と捜査関係者は説明している。≫

 この男に絞り込まれた原因はなんだったのか。

 ≪捜査関係者によると、男は4日午後5時ごろ、玩具を盗んだ疑いがある。事件後の18日、被害品と
同型の玩具が中野区内の古物店にあるのを捜査員が発見。玩具を7日夕に持ち込んだ男が、まんだら
けの防犯カメラに映っていた人物に似ており、保険証を提示していたことなどから浮上した。玩具は盗ま
れた品だと、まんだらけが確認した。≫

 盗品は、自宅に飾られるか、古物店に持ち込まれる。
 自宅に飾られると、よその人にはわからない。同居する家族が気づいて、返還してくれることを期待す
るしかない。

 今回、盗まれた「鉄人28号」は、古物店に持ち込まれた。
 これが事件解決のきっかけになった。

 古物店の営業主(古物商)は、古物営業法で営業許可をとっている人なので、同法の規定を守らなけ
ればならない。

 古物商は、古物を買い受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、次の各号のいずれか
に掲げる措置をとらなければならない(15条1項)。
 1) 相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認すること。
 2) 相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書(その者の署名のあるものに限る。)
  の交付を受けること。
 3) 相手方からその住所、氏名、職業及び年齢の電磁的方法による記録であつて、これらの情報に
  ついてその者による電子署名が行われているものの提供を受けること。
 4) 前三号に掲げるもののほか、これらに準ずる措置として国家公安委員会規則で定めるもの

 古物商は、持ち込まれた物について、持ち込んだ人の身元を確認することになっているので、「鉄人2
8号」が持ち込まれた場合も同じことが行われていた。これで、盗品を持ち込んだ人を後から確認するこ
とができる。
 ここが被疑者逮捕の有力な手掛かりになっている。

 そして、同条3項で、「古物商は、古物を買い受けようとする場合において、当該古物について不正
品の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。」
と規定してい
る。

 事件発生の直後に持ち込まれていることからして、本件の場合、「鉄人28号」を持ち込まれた古物商
は、警察にこの申告をしたのだろうか。記事には、≪被害品と同型の玩具が中野区内の古物店にある
のを捜査員が発見≫とあるから、古物商は警察に申告していなかったようだ。持ち込んだ男に特に不
審な点はなかったということか・・・?

 「鉄人28号」を買った古物店が盗品だと知らなかったら、「まんだらけ」は、古物店が買った値段で買
い取るしかないのだろうか。
 ちがう。古物営業法にはこんな規定がある。
 古物商が買い受けた古物のうちに盗品があった場合は、その古物商が当該盗品を公の市場におい
て又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合でも、被害者は、古物商に無償での回
復を求めることができる(20条)。

 盗品だと予想できなかったときでも、被害者はタダで返してもらえる。だから、今回の場合はなおさら
のことタダで返してもらえる。
 これは古物商に厳しいことだけれど、そうすることで、古物商が盗品売買の仲介などに関わらないよ
うに牽制しているのだ。

 まんだらけが盗品を買ってしまえば、そのときは、まんだらけがタダで盗品を所有者に返さなければ
ならなくなる。