おもしろかった「日曜討論」

 日曜日の朝、NHKでは政治討論番組を放送している。たいていは、特定のテーマについて
与野党の議員が真っ向から対立する、という感じになっている。が、昨日(8月24日)の「日曜
討論」の後半部分(第2部)は、ちょっとちがっていた。

 テーマは、特定秘密秘密保護法。
 運用基準や政令パブリックコメントの最終日に合わせてきた。

 発言者は6人。
 前防衛大臣拓殖大学特任教授 森本敏さん
 元内閣情報調査室長・日本文化大学学長 大森義夫さん
 弁護士・情報保全諮問会議委員 住田裕子さん
 学習院大学大学院教授 青井未帆さん
 NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長 三木由希子さん
 映画監督 想田和弘さん

 左右3人ずつ並んで向き合うという、いつもの並び方からすると、「賛成」派3人、「反対」派
3人を向かい合わせているという感じ。

 が、それぞれの冒頭の発言を聴いていると、「賛成」「反対」がそれほど鮮明ではない。
 「賛成」派にしても、「情報公開への配慮が必要だ」と言い、「反対」派にしても、「政府に秘
密があることを全面的に否定するわけではない」と言う。
「反対」派の想田さんは、「例えば」
という言い方が多くて、はっきりしなかったが。

 三木さんが「秘密情報が行政内部で作られる」という話をしたときのこと。森本さんが、すか
さず、「9割以上が外国や外国とのやりとりに関する情報だ。外国との信頼関係や外国に知ら
れるのはまずいという情報がほとんどだ。国内で作られる情報は一部に過ぎない」と言い返し
た。
 三木さんはこれに反論しなかったので、視聴者は森本さんの意見が全面的に正しいと思っ
たにちがいない。森本さんの意見は正しい。しかし、それは半分だ。
 森本さんは、冒頭の自己紹介でも言っていたように、防衛省と外務省を体験している元官
僚だ。だから、その組織の内情には詳しいし、指摘は正しいと思う。これを秘密保護法別表
についてみると、第1号(防衛秘密)と第2号(外交秘密)についての発言なのだ。
第3号(特
定有害活動)と第4号(テロ活動)は含まれていない。
 森本さんは、第3号と第4号については、「どのような内容を指しているのかわからない」
と率直に疑問を口にしていた。森本さんは知らないことを知っているように言うような人では
ない。彼は、第3号と第4号には言及していないのだ。警察庁が、国際テロ対策の名の下に、
全国の警察にイスラム教徒の個人情報を集めさせていた実績からすると、第3号と第4号に
関する情報は国内で量産される可能性があるのではないだろうか。この点については、元内
閣情報調査室長の大森さんから何の説明もなかった。

 その大森さんが、「情報公開で不十分だ」と指摘した点は、するどかった。「官僚も政治家
も指定解除なんかするはずがないから、30年で一律に指定解除する制度にした方がいい」

と言ってのけた。内閣情報調査室長をした経験のある人からこんな率直な意見が出るとは思
わなかった。驚いた。こういう発言は長年、組織内にいたことがあり、かつ、それなりの高い
地位にまで上がった人でないと言えないことだ。なるほどと思った。

 参加者の多くが「もっとよくした方がいい」という方向で意見を出していた。単なる「賛成」「反
対」ではない、少し突っ込んだ意見交換になっていておもしろかった。