警察手帳が盗まれた!
一昨日(2014年10月9日)の毎日新聞の朝刊記事。
8日、さいたま市で、逮捕した少年のポケットから本物の警察手帳が出て来た。
なぜ、少年が警察手帳を持っていたのか?
記事によると、警視庁の男性警察官の緑区の自宅に盗みに入って現金と一緒に盗んだという。
なぜ、男性警察官は自宅に警察手帳を置いていたのか?
記事にはその理由が書いてない。
警察手帳は備品として各警察官に貸し出されるものだ(警察法68条)。これを受けて、警察手
帳規則では、「警察手帳は、その取扱いを慎重にし、・・・都警察にあっては警視総監、道府県
警察にあっては道府県警察本部長が特に指定した場合を除き、常にこれを携帯しなければな
らない。」(6条)と規定している。
貸与品で、その取扱いを慎重にしろ、というのであれば、仕事中は「常にこれを携帯しなけれ
ばならない」としても、仕事が終わったら、勤務先の警察署に保管して帰宅すべきなのではな
いか。
全国の警察官は約25万人。この人たちが毎日、警察手帳を自宅に持って帰っていたら、どこ
かで紛失したり、盗まれたり、破損したりすることが、大いに起こり得る。
警察手帳を盗んだ人は、それを何か悪用しようと考える。そうでなければ、盗む意味がない。
記事によれば、この事件でも、盗まれた後、同じ緑区内で、警察手帳を10代の女性にみせて、
「送っていく」と声をかけたり腕を引っ張ったりした男がいたという。男はこの少年かもしれない。
男性警察官が勝手に持って帰っていたのなら、懲戒処分か何らかの処分を受けることになる
だろう。が、そうではない。
警察手帳規則6条(「常にこれを携帯しなければならない」)が根拠なのだそうだ。
しかし、この規定から、休みの日でも携帯していなければならないと読むのはおかしい。
警察官は職業のひとつ。仕事を離れたら、ふつうの人。いざというときに警察官の仕事をしな
ければいけないことがあるにしても、それは例外的な緊急事態の場合だけで、それも警察手帳
がなければ警察官の仕事ができないわけではない。
このことを年配の警察官に聞いた。答えは明確。「かつては、仕事が終わったら勤務先の警
察署の自分のロッカーに警察手帳をしまって帰宅し、仕事のために警察署に出て来たときに、
ロッカーから出して携帯していた」。これなら、職務時間外に警察手帳が盗まれることはない。
警察手帳規則6条も、ふつうに読めば、職務中は「常にこれを携帯しなければならない」とな
るのであって、職務時間外でも「常にこれを携帯しなければならない」とはならない。
年配の警察官曰く、「それがいつの間にか、「いつでも持っていろ」となった」「いざというとき
に、すぐに警察官の仕事ができるようにということらしいが、そんなことはまずない」「だから、
いつも持っていなければならないことによるストレスの方がはるかに問題だと思う」
仕事のとき以外でも警察手帳を持っていて、いつでも警察官の仕事がスムーズにできるよ
うにしろ。ほとんどの警察官は紛失や盗難などに遭わないのだから、そんなことになったとき
は、全部、警察官個人の責任問題として処理しろ。これは、現場の警察官を1つの駒としかみ
ない、彼らが背負うリスク(紛失や盗難などのリスクとそれが現実化したときの懲罰のリスク)と
ストレスなどまったく考えない霞ヶ関(警察庁)の警察官僚の発想だ。
このような運用は困る、と現場の警察官から声を挙げることができない。それが他の民主主
義国家とちがって、警察官に労働者としての団結権さえ認めない日本の特異な現実だ。