秘密保護法をどうやって廃止に持ち込むのですか?

 久しく行き来のなかった知り合いの弁護士からメールが来た。
 清水さんは秘密保護法廃止を実現するための具体的なイメージをどんなふうに
持っているのか、というものでした。
 わたしは次のような返事を送りました。(但し、一部カット)


 日弁連はかつては法案が成立するか廃案になるかだけを追及していました。そ
のため、廃案になれば「よかったね」、成立すれば「反対だ」と言って終わっていま
した。
 しかし、どちらの場合も、実際にはそこで終わりではなく、現実や行政実務は動
いて行きます。それは目立った動きではないのですが、しっかりフォローし問題を
指摘し続ける必要があるのです。

 秘密保護法は、これが成立したことで、自衛隊法の一部改正されたり、防衛省
扱っている情報を公文書管理法の対象にしたり、国会が監視委員会を法制化した
りなどの動きがあります。

 これは、これまで法律によらずに管理されていた情報が法律で規制されるように
なり、国会の監視が及ばなかった情報について監視できる可能性が高まったりし
ているもので、国家情報の適正管理という観点からすると望ましいことです。

 秘密保護法の廃止が、元に戻すという意味であるならば、これらの改善がなかっ
た状態にしろ、ということになります。わたしは、それでいいのかなあ?と感じてい
ます。

 わたしの感覚では、制度の修正、改善です。

 ただ、このように言うと、「秘密保護法に条件付き賛成なのか」という非難を含ん
だ指摘を受けることになります。

 それに対する私の答えは、「そうです」。
 わたしは日弁連の反対意見書を起案する担当者のひとりでしたが、どの意見書
も全面反対というものではありません。
たとえば、立法事実が無いという指摘は、
「このような法律はいらない」と言っているだけで、「ちがったものであれば、必要
だ」
となります。それが公文書管理法の見直しです。
 そこでは、管理システムの改善や管理教育・研修、運用実績のチェックなどに関
する法制度は必要だ、適性評価は根掘り葉掘りする必要はない、制裁は漏えいの
有無に関わらず管理ルール違反についてなされるべきで、漏えいだけを処罰対象
とする制度設計ではダメだ、などです。

 わたしの考え方は、運動のスローガンになりにくいので、日弁連にも市民運動
も採用されません。それはやむを得ないと思っています。

 しかし、運用基準では、強引に法案を成立させていたときとはちがって、皮肉にも、
わたしの問題意識がかなり反映されています。そこでは実際の制度運用の合理性
が追及される必要があるからです。


 このような内容です。いかがでしょうか。
 情報管理の問題は一旦手がけたら終わりはありません。どのような形になるに
せよ続けていかなければなりません。法律や制度を廃止してもネーミングを変え
ても、情報管理の問題が消えてなくなるわけではありません。
合理性の追求はず
っと続け、不合理な点が明らかになったらその都度こまめに修正していきます。
 多くの人々が関心を持ち続け、意見を言い続けてくれることが重要だと考えていま
す。