上川法務大臣の発言について

 NHK/NEWSWEB(2014年(平成26年)12月9日[火曜日])によると
 ≪上川法務大臣は、閣議のあとの記者会見で、特定秘密保護法が10日
施行されることについて、国会への施行状況の報告や公表などを通じて、
国民の懸念の払拭(ふっしょく)に努める考えを示しました。≫

 上川法務大臣の発言は、「国家として当然有すべき安全保障上の重要
機密情報を管理する一元的、体系的な法律上のルールが定められ、秘
密保護に関する国家の最低限のインフラが整うことになる
」というものだっ
たそうだ。

 が、「国家として当然有すべき」という考え方からは特定の情報保全
ステムを導くことはできない。
それぞれの国が国際社会の中で置かれてい
る立場や状況によって大きく違って来る。それにかける金額もまったく違う。

 「安全保障」をどのような内容で捉えるかで、「重要機密情報」の範囲は
変わってくる。

 国家が管理する情報について「一元的、体系的な法律上のルール」が
必要なことは、そのとおりだ。その意味での「インフラ」は必要だし、それ
は「最低限」のものではなく、必要かつ合理的な水準のもの
であるべきだ。
 この点は、上川法務大臣より私の方が厳格な管理を求めているのかもし
れない。

 ≪そのうえで、上川大臣は、国民の「知る権利」などへの影響について、
「この法律は、スパイなどから安全保障上の重要な秘密を守り、漏えいを
防止することが目的で、適正な運用を確保するため、政令や運用基準で二
重三重の仕組みを構築した。政府として、実効的かつ適正な運用を積み重
ね、施行状況の国会への報告や公表などを通じて、懸念されているような
ことがないことを明らかにしていきたい
」と述べ、国民の懸念の払拭に努め
る考えを示しました。≫

 ここにいう「スパイ」は特定の国がスパイとして雇用した人のことを指して
いるのか。それなら人はかぎられるが、秘密保護法の別表第3号の「特定
有害活動」を指しているのだとすれば、その定義規定はきわめて曖昧で、
自覚のないスパイ(「え、私のしていることがスパイ活動?!」)が無数に
存在することになる危険がある。
思い過ごしの懸念に止まらないだろう。

 これまでも特定秘密に相当する情報は存在した。それを法律で規制し、
必要な範囲で共有して利用するという方向性はよいと思う。
 しかし、罰則の強化を手段とするのは、実施機関に拡大解釈による権限
濫用の可能性を与えてしまうことから問題だ。