サジダ・リシャウィ死刑囚の釈放要求の?

 後藤健二さん、湯川遥菜さんの人質動画の公開と2億ドルの要求。
 これだけでもとても真面目に計算した要求とは思えなかったが、その後に出て来た、ヨル
ダンに収監されているテロ犯サジダ・リシャウィ死刑囚の釈放要求は、疑問だらけ。
 なのに、29日には、「(現地時間の29日の日没までに)トルコ国境までリシャウィ死刑囚
をつれて来なければパイロット、後藤の順に死ぬ」と言い出した。何を考えているんだか。
一国を代表して世界にメッセージする内容ではない。支離滅裂。

 AERA 2015年2月9日号では、
 ≪死刑囚の釈放要求もどこまで真剣か疑問が残る。同死刑囚は「イラクアルカイダ」を
率いたザルカウィ容疑者の親族とも言われるが、英雄視されていたわけでもなく、過去にイ
スラム国が強く釈放を求めたこともない。身代金を諦め、思いつきで名前を出したようにす
ら思える。≫

 同感。そうなのだ。
 リシャウィ死刑囚は自爆テロをさせられていた人だ。イスラム国の要人ではない。イスラ
ム国にとっては特に取り返したい重要人物ではない。

 仮に、彼女がイスラム国にとって重要な人物で発言力があるのなら、ヨルダンは、彼女に
イスラム国宛てのメッセージを言ってもらえばよかった。「ヨルダン政府は私をイスラム国に
返すと言っているから、後藤さん、湯川さん、パイロットを殺害してはならない。私の命令に
従いなさい」と。
それがない。

 自爆テロに失敗したリシャウィ死刑囚は、イスラム国で英雄扱いされるとは思えない。そ
れどころか、何をされるかわからない。だから、帰りたくないのではないか。ヨルダンで死
刑囚の地位にいる方が、イスラム国に帰されるよりずっと安全かもしれない。

 イスラム国の発信する言葉に過剰反応するのは、それ自体がイスラム国脅威論を増長
し便乗した、独自の計算の上のことのように思える。それはイスラム国の危険性ではない。