新幹線放火事件の緊急会議で対応策は出たか?

TBS系(JNN)7月1日(水)20時16分配信
≪走行中の新幹線車内で男が油のようなものをかぶって焼身自殺し、巻き込まれた乗客ら
27人が死傷した事件を受け、太田国交大臣とJR東海などJR5社の幹部が、安全対策に
ついて緊急会議を開きました。≫

必要な緊急会議だ。

≪「国民の皆さんが安心して新幹線を利用していただけるように、環境を確保していく必要
があると」(太田昭宏国交相)≫


具体的なことは何も言っていない。

≪会議では、危険物の持ち込み規制などで意見が交わされ、今後、規制の見直しも検討
することになりました。≫

危険物の持ち込み禁止は当然。在来線の車内放送でもいつも言っていること。
問題は、鉄道各社で危険物持ち込み禁止を徹底する対策を取れるか、である。
≪「大きなものを隠し持って車内に入った。そういったものをどうやって防いでいけるか、
よく考えて対策を取っていきたい」(JR東海 金子慎副社長)≫

航空機への搭乗チェックと同じことを新幹線でもやるか。新幹線でやるなら、在来線でや
らないというのもおかしい。在来線でもやるべきだということになる。

≪太田国交大臣は、『各社でできることを徹底してほしい』と指示したということです。
(01日18:07).≫

何も言っていない。

これは対策会議になっていない。
新幹線、在来線の本数の多さ、乗降客の多さからして、全乗客の所持品・身体検査を
徹底することは不可能。実行すれば、新幹線の本数も在来線の本数もずっと減らさな
ければならない。乗客は改札口に長時間並ばされてかなりイラつくだろう。検査機器
の購入、検査要員の確保で、乗車料金は大幅値上げになるだろう。私たちはこれを受
け容れることができるだろうか。

地下鉄サリン事件で多くの被害者が出ても地下鉄は乗客全員の所持品検査を始めると
いうことをしなかった。していたら、都心の交通はどうなっていただろうか、日本の経済へ
の影響はどうだったろうか。そのときでさえしなかったことを、今回はするのか。

都心では、鉄道への飛び込み自殺と思われる事件が珍しくない。自殺の方法を線路では
なく電車の中にする人が出て来ることは全く予想できないことではなかった。実際に起こ
るまで考えようとしなかった、対策を講じようとしなかっただけだ。

人はどこで自殺するかわからない。ビルの屋上から飛び降りて歩道を歩いていた人が大
怪我をすることだってある。だからと言って、日本中のビルの屋上へ出ることを原則禁止
にするという話は聞かない。

危険物の持ち込みについては、これまでどおり、持ち込まないでください、と言い続ける
しかない。

同じようなことが起こったときに、被害を最少化するにはどうすればよいかを考える方
が現実的だ。

今回の焼身自殺についてみると、焼身自殺をした男性が火をつけた場所と、巻き添えに
なって死亡した女性との位置関係は、1両分離れている。男性の周囲にいた人たちが重
軽傷を負ったものの、死亡していない。死亡した女性と死ななかった乗客とでなにが違
っていたのか。それは危険発生時の個々人のとった行動の違いだろう。この違いこそ
が具体的に明らかにされるべきだ。
そうすることによって、人は同じような危険に遭遇し
たときに、自分の力で被害を最少化することができる。

安心安全社会の担い手は警察でも行政でもない。自分自身だ。