慰安婦研究書の著者在宅起訴

日経新聞2015/11/19 18:48
≪【ソウル=共同】韓国のソウル東部地検は19日までに、旧日本軍の従軍慰安婦問題の
研究書「帝国の慰安婦」で、慰安婦を一部で「売春婦」などと表現し元慰安婦の女性らの名
誉を毀損したとして、著者の朴裕河(パク・ユハ)世宗大教授を在宅起訴した。≫

≪地検は「虚偽事実で被害者らの人格権と名誉権を侵害し、学問の自由を逸脱している」と指摘した。韓国で慰安婦問題は「性奴隷」との見方が定着し異論を許さない雰囲気が強い
が、訴追によりさらに研究の萎縮を招く可能性もある。≫

日本では名誉毀損罪は親告罪(刑法232条)。
被害者から訴えがなければ、起訴できないという犯罪類型だ。
日本の検察は、起訴できない捜査は通常しない。
名誉毀損の事件は、捜査をすること、つまり、根掘り葉掘り聞き出すこと、その信憑性を
確認するために周辺や過去の関係者の事情聴取も行うことがある。しかも、公開法廷で
証言しなければならなくなる可能性もある。

韓国では親告罪ではないのだろうか。

≪朴氏は2013年出版の同書で慰安婦問題について、帝国主義下での女性の人権侵害
を指摘する一方、慰安婦の女性らは日本軍と「同志的関係」にもあった
などと記述。これ
に対し地検は「慰安婦制度は強制的な売春」などとした07年の米下院決議などを挙げ「客
観的な資料を通じ虚偽事実と確認した」とした。≫

朴氏の「問題を一面的にみるな」という観点は正しい。
慰安婦の女性らは日本軍と「同志的関係」にもあった、という指摘は、これを裏付ける事実
があるかどうかの問題だ。

地検が、米下院決議を根拠に挙げるのはどうも情けない気がする。

≪地検は「言論と出版、学問の自由は韓国憲法が保障する基本的権利」とした上で「秩序
維持や公共福利のため必要な場合、自由と権利の本質的な部分を侵害しない範囲内で
制限できる」
とした。≫

日本でも、むかし、最高裁が、「公共の福祉」を権利制限の根拠として使っていたっけ。とて
も法律家とは思えない雑さ。それと似ている。

≪同書は韓国で、日本を擁護する主張だとして激しい非難を浴び、慰安婦の女性ら約
10人が14年6月に朴氏を告訴
。ソウル東部地裁は今年2月、女性らが同書の出版や広
告を禁じるよう求めた仮処分申し立ての一部を認める決定を出し、出版社は問題とされた
部分の文字を伏せ、出版した。≫

告訴した約10人(10人かどうかはっきりしない?)は、自分のことを書かれていたのだろ
うか。自分のことでなくても告訴できるのだろうか。

韓国のマスコミはどういう報道をしたのだろう。

≪日本では14年、日本語による書き下ろし「帝国の慰安婦〜植民地支配と記憶の闘い
〜」
が出版され、今年の早稲田大「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」の文化貢
献部門に選ばれた。≫

≪朴氏を告訴した女性らが住むソウル郊外の施設「ナヌムの家」は19日、同書が引き続
き日韓で販売されていることを「反人権的な行為だ」
と批判した。≫

どれほどひどい内容かを読者が判断してはいけないのだろうか。