海外での違法賭博は犯罪か?

産経新聞2015.11.25 10:00更新
中央日報によると、不法賭博は昨年12月、マカオのホテルの私設賭博場で行われたと
いう。運営者は韓国・光州出身の元暴力団員とされる。関与したとされるユン・ソンファン、
アン・ジマンの両投手はともに4億ウォン(約4260万円)を用意。1回当たりの賭け金の
1.2%を手数料として支払った。約13億ウォンを得たユン・ソンファンが支払いを要求し
たところ、逆に賭博を暴露すると脅迫されたという。2選手は運営者から航空券と宿泊代
を提供されていたとも報じられる。≫

賭博をしていた者同士の関係だけでみると、折角、大勝ちした野球選手は脅されて、約
13億ウォンを払ってもらえなかったようだ。暴力団にしてみれば、最初から、野球選
手から大金を巻き上げてやる、逆に払うことになるとしても、少額の勝ちなら払ってやっ
てもいいが、大勝ちされたら払うもんかというつもりだったのだろう。要するに、野球選
手は最初からカモだったのだ。

中央日報日本語版 11月26日(木)8時39分配信
プロ野球サムスン・ライオンズ所属の林昌勇(イム・チャンヨン、39)が海外遠征賭博
容疑
で検察で調査を受けた。林昌勇は検察の調査で「マカオのカジノで4000万ウォン
(約430万円)相当の賭博をした」と認めたという。≫

この記事を読んで不思議に思ったのは、事件の現場が韓国内でなくマカオなのに、どう
して韓国の刑法が適用されるのか
という点だ。

法律は、原則として、その法律をつくった国の中でしか適用されない。それぞれの国が
その支配領域内でそれぞれの法律を作り運用することになっている。

まして、刑罰ということになれば、よその国で起こっていることを、他の国が「処罰の対
象だ。逮捕するぞ。起訴するぞ」というのは、かなりでしゃばった態度だ。

刑罰は国内の秩序を維持するための制度だから、国内で起こった犯罪、国内にいる人に
ついてだけ処罰の対象にすれば足りるはずだ。

日本の刑法の1条1項が、「この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適
用する。」
と規定しているのは、もっとものことだ。

だけど、それだけじゃ、日本国内の秩序を維持できない場合もあるんだ、ということで規
定されているのが、1条2項(日本船舶内、日本航空機内)、2条(国籍を問わない国外犯
)、3条(日本国民の国外犯)、3条の2(日本国民以外の者の国外犯)、4条(公務員の国
外犯)、4条の2(条例による国外犯)だ。

マカオでの違法賭博が関係するのは、日本の刑法でみると3条(日本国民の国外犯)だ。3条では、放火、私文書偽造、強姦、殺人、誘拐、窃盗、強盗、詐欺、背任、恐喝、業務上
横領など16項目を規定しているが、賭博罪(185条、186条)は入っていない。海外で
(違法)賭博をしても、日本社会の秩序を損なうことはないという価値判断なのだろう。

これに対して、韓国の刑法では、海外での賭博でも違法賭博は処罰の対象としているよう
だ。そうだとすれば、賭博することを処罰する意味が日本とはちがうのかもしれない。社会
秩序の維持よりも、違法な賭博に手を出す人(反社会的傾向?)に着眼点を置いているの
かもしれない。

マカオ中華人民共和国マカオ特別行政区)が処罰対象にするかどうかは別問題だ。
マカオで犯罪にしていないのなら、そういうことを、他の国が犯罪として扱うのはどうかとい
う問題がある。
マカオでも犯罪としていて処罰されることになった場合、本国でさらに処罰できるかという
問題もある。日本の刑法では、同一の行為についてさらに処罰することはできるが、外国
ですでに刑の全部または一部の執行を受けているときは、刑の執行を軽くするか、免除す
ることにしている(5条)。