大阪府警の決断/「強化月間」大幅カット

産経新聞 11月28日(土)14時48分配信
≪事件捜査や交通取り締まりなどの取り組みを推進するため警察が設定する「強化月間」について、大阪府警が今年、業務効率化に向けて昨年の半数以下となる6種類に削減し
ことが分かった。告訴・告発や暴力団取り締まりといった長年実施されてきた月間も廃止
に。時期を区切って特定分野の摘発強化を掲げることで、不祥事を誘発しかねない不要な
「プレッシャー」を現場の警察官が感じないようにする
狙いもある。≫

警察はとにかく強化月間が好きだ。
強化月間で検挙件数の多い警察署、警察官が高く評価される。強化月間を設定している側(警察組織の上の方の人たち)は、「どこが数字を上げるかな」
と楽しみにしていればいいかもしれないが、数字を上げることを期待される(強く求められ
る)現場の警察官はたいへんだ。

≪官公庁では、所管業務の中で特に推進・啓発する必要がある場合、その分野の名前を
冠した「〜月間」を定める。警察では、警察庁都道府県警が交通安全や事件捜査などで
さまざまな「強化月間」を設定し、この時期に関連施策や逮捕・送検などの事件処理を集中
的に行っている。≫

警察の「強化月間」を他の役所一般の「なんとか月間」と同列にみてはいけない。警察の強
化月間では、数字を上げるために犯罪や不正が行われたり、数字を上げるために一般市
民が犠牲にされたりする。

大阪府警警務課によると、府警では昨年、13種類の強化月間があったが、「特定時期に
事務作業が集中するのは効率的でない」として、今年は6種類に削減。警察庁が全国一律
で定める「外国人組織犯罪対策及び不法就労・不法滞在防止のための活動」や「指名手配
被疑者捜査」、他機関と合同で実施する「地域警察活動」などに絞った。≫

「特定時期に事務作業が集中するのは効率的でない」というのが削減の理由なのか。そう
であれば、他の強化月間についても当てはまるだろうし、他の都道府県で実施しているい
ろいろな強化月間も同じではないか。

「外国人組織犯罪対策及び不法就労・不法滞在防止のための活動」や「指名手配被疑者
捜査」については、警察庁が全国一律で強化月間を定めているようだが、これらが特定の
時期に取り組みの強化を必要とするのか理解できない。
外国人組織犯罪対策はふだんの地道な捜査活動の積み重ねが必要だろうし、不法就労
不法滞在はいろいろな事情、いろいろな内容がある。単純に「防止」すればいいというもの
ではないだろう。

≪これに伴い、詐欺をはじめとする知能犯罪に関する告訴・告発事件捜査や暴力団・薬物
・拳銃が対象の組織犯罪対策、消費者被害などを扱う生活経済・生活環境事犯、悪質駐車
違反の取り締まりといった強化月間が姿を消すことになった。≫

これらの犯罪はそもそも特定の時期に捜査を強化すべき犯罪類型ではない。
≪府警は強化月間中に事件処理数などで「ノルマ」があったわけではないとしているが、あ
る捜査員は「強化月間中はおのずと(強化対象の)事件処理を一定数進めなくてはいけな
いというプレッシャーがあった」と打ち明ける。≫

強化月間中に事件処理数などで「ノルマ」があったわけではない、というのは、決まり文句
の詭弁だ。「これはお前のノルマだ」と言わなければノルマではない、ということなら、確か
にノルマはないだろう。しかし、「強化月間中はおのずと(強化対象の)事件処理を一定数
進めなくてはいけないというプレッシャーがあった」ということは、現場の警察官にとって強
化月間はノルマになっているということだ。

≪府警幹部は「告訴・告発事件や暴力団関連の捜査などは本来、特定時期に限らず事案
ごとに通年で取り組むべきだ」
と指摘。「強化月間があれば現場はどうしても意識してしま
う。
業務の合理化とともに、本来取り組むべき事案を後回しにするような事態を招かないよ
うにするためという意味もある」と話している。≫

ごもっとも。
ほかの都道府県警察はどうするのだろう。