NHK『あさが来た』の妾問題

『あさが来た』で、妾を出すか出さないかが話題になっているらしい。
あの時代にあの生き方をした女の夫に妾(第二の妻?)がいて、家のために子孫をつくろう
とすることは当たり前だし、これまでのストーリー展開からしても、当然そうなるよね、と思っ
ていた。

週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号
小林よしのりが「絶対に妾を描くべきだ」「明治の時代には、お家を残すために妾がいるこ
とは当たり前だった
わけで、単身で炭鉱に乗り込むなど過激な描写に挑んできた『あさが来
た』には、そこから逃げてもらいたくない。正妻と妾の葛藤や、当時の道徳観を描いてこそ、
本物のドラマになるはずです」

全く同感。

≪史実では、主人公・あさ(波瑠)のモデルである広岡浅子と夫・信五郎の間には娘しか生
まれなかった。そこで浅子の実家から呼び寄せた女中を妾にして、彼女が産んだ男児は後
に浅子らが創業した大同生命の社長となった。≫

隠す必要はない。
 
小林よしのりの意見に対して、≪「男尊女卑の象徴である妾など論外」「明治に妾は当たり
前だったので登場させろ」「NHKは批判を避けているのでは」と視聴者の間で熱い議論が
飛び交った。≫そうだが。
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記事にあるように、≪妾は歴史を語るうえで、無くてはならない存在になることもある。≫
 
≪「高杉晋作の妾・おうのは晩年の逃避行に同行し、伊藤博文の妾・梅子はのちに夫人と
なり夫を支えていたそうです」(歴史研究家・河合敦氏)≫

そうですね。
 
≪これほど妾が一般的だった時代なのに、朝ドラは妾を登場させることを避けているように
見える。日本の家族観について研究する兵庫教育大学大学院助教の永田夏来氏は、ドラ
マに現代の価値観を当てはめるのは無理があるとする。≫

いまの時代の常識の「正しさ」は正しいのか、その「正しさ」が何をもたらしているかを考え
るために、番組では妾をぜひ出してほしい。
 
≪実は『あさが来た』には描かれていない史実がある。≫
 
≪「そもそも史実では広岡浅子自身が妾の子だが、一切触れていない。NHKはシリーズを
通して、『妾』の存在を隠し通す方針かもしれません」(テレビ局関係者)≫

そういうことか。
 
NHK広報室は「妾」を巡る今後の展開を「広岡浅子さんの人生をそのまま描くドラマでは
ありませんので、ご理解をいただければ幸いです」と説明した。≫

朝ドラで妾論争を大々的に展開する必要はないけれど、嫡出(法律上の夫婦間で生まれた
子)か非嫡出(法律上の夫婦間以外で生まれた子)かで、生まれてきた子を、国家や社会が
差別することの不合理さを考えるきっかけにはなるだろう。嫡出で生まれるか非嫡出で生ま
れるかは、生まれてきた本人には決めることができなかったのに、その本人が差別される。
これはどう考えても不合理だ。
そういう子も、ほかの子と同じように、のびやかに育つことが
できるようにする。それが周囲の人々、社会、国の責任ではないか。

あさが妾の子でありながら、自分の人生を歩めたのは、自分の努力もさることながら、周囲
の理解と協力もあったからだろう。妾の子であるかどうかで、あさの人生は左右されなかった
のだ(ろう)。

あさの時代といま。どっちが他人の生に対して寛容だろうか。