NYタイムズ1面に空白

CNN.co.jp 12月2日(水)14時50分配信
≪ロサンゼルス(CNNMoney)タイで発行された1日付の米紙ニューヨーク・タイムズ
の国際版が、タイ経済の停滞について報じた記事を巡って同国の印刷会社に掲載を
拒まれ、1面の中央部分に大きな空白を残したまま発行された。

目立つ。だれもが注目する。

≪空白部分に掲載されていた記事は、タイで世帯当たりの借金が急騰し、犯罪が増え、
軍が政府に対する統制を強めているという内容だった。≫

タイの経済状態、犯罪傾向、軍の統制。政権を担う者は国内外に知られたくないことだ。

≪しかしタイ国内で発行された1日付の紙面は、1面のこの記事の部分が抜け落ちてい
、「本欄の記事はタイの印刷会社によって削除されました。ニューヨーク・タイムズ
際版とその編集者は、同記事の削除に関与していません」
という文章のみが掲載され
た。≫

「本欄の記事はタイの印刷会社によって削除されました。ニューヨーク・タイムズ国際版
とその編集者は、同記事の削除に関与していません」というコメントが秀逸。この削除に
タイムズ国際版とその編集者は関与していない。タイの印刷会社が行った。だれが削除
したかを明確にしているのがいい。

≪同紙の広報は、記事の削除は印刷会社が決めたことで、同紙は関与していないと強
調。「現地の発行人に時として圧力がかかることは認識している」としながらも、「我々の
報道に対する検閲を遺憾に思う」とコメントした。≫

遺憾?
遺憾は政治家がよく使う言葉だが、意味がよくわからない。英語ではもっとはっきり書い
ているのではないか。

≪タイでは2014年のクーデターで軍が実権を握って以来、報道の自由が大幅に規制
されている。≫

軍事政権ではどうしてもそうなる。

≪9月にニューヨーク・タイムズ紙がタイ国王の健康状態悪化について報じた時は、内
容があまりにデリケートすぎるとして、同じ印刷会社が紙面そのものの印刷を見送った。≫

これは印刷会社の判断だろうか。

空白部分がある新聞と、そもそも印刷を見送った新聞では、意味がまったくちがう。
読者からすれば、前者は、検閲があったこと、そのことが読者にわかるように発行者が
アピールしていることがはっきりわかるけれど、後者は、記事がカットされていることが
わからない。
読者にとって怖いのは検閲よりも自粛の広がりとその日常化だ。