職場の障害者虐待と虐殺事件の関係を考えると

日経新聞2016/7/27 21:12
≪職場の雇い主や上司から虐待を受けた障害者が2015年度に970人だったことが27日、厚生労働省
の集計で分かった。最多の経済的虐待のうち賃金不払いの対象範囲を広げた結果、14年度の483人か
ら倍増した。心理的・身体的虐待も増えており、同省は「障害者虐待防止法の周知が進み、通報への意
識が高まってきた」としている。≫

厚労省は、「通報への意識が高まってきた」と評価する。
まだまだ顕在化していないケースがたくさんある、と推測している。
≪経済的虐待は855人。14年度までは、賃金不払いに障害者以外も含まれている場合は虐待として計
上しなかったが、今回から対象とした。集計方法を変えていない心理的虐待も92%増の75人、身体的
虐待は約3倍の73人と大幅に増えた。≫

社会の一員として働こうとしている障がい者の前に立ちはだかる壁。
わたしの事務所に相談に来た男性は、目が不自由なことがわかって採用していながら、使用者があえて
負担をかけるような作業をさせる、とこぼしていた。

≪職場で障害者に虐待をしていたのは519人。内訳は事業主が450人で最も多く、次は所属の上司の
48人。障害者が上司らから「おまえがいなくなれば楽になる」などの暴言を吐かれ、頭を拳やヘラでたた
かれるといった事例があった。≫

「おまえがいなくなれば楽になる」
この発想は異常だろうか。身近に一緒にいればこそ生まれてくる発想なのではないか。
これだけでも、
言われた側は、肉体的に殺されるわけではないが、精神的にかなりまいる。
お前らは不要だ、邪魔だ。
日本社会に暮らす私たちは、実は、この感覚を無自覚のうちにまだ共有しているのではないか。そういう
社会に支えられ、甘やかされて、今回の事件は起こったのかもしれない。