ネットメディアの連続敗訴は当然

弁護士ドットコムNEWSによると、
首相官邸前で行われた「反原発デモ」の模様を、国会記者会館の屋上から撮影しようとした
ことを拒否されたのは報道の自由の侵害だとして、インターネットメディアの「OurPlanet-TV」
が国と国会記者会に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は4月14日、原告の請求を
棄却した。≫

おもしろい裁判だ。
ネットメディアが、権力を監視しているはずのマスコミと国を相手に裁判を起こして、負けた。呆
れる判決だけれど、これが日本の現実。予想どおり。

≪高野伸裁判長は判決で「国会記者会館の屋上は、中継や撮影を行うことを用途として予定
していない」
と指摘。安全面などを理由に、記者会が使用を拒否したことについて「不正な動機
ということもできない」とした。≫

「国会記者会館の屋上は、中継や撮影を行うことを用途として予定していない」
だから、なに?
記者会に所属しているマスコミは使っているようが。
使用を拒否した記者会ってなにものだ?

国会記者会館は、東京・永田町の国有地にある国有財産で、新聞やテレビ局からなる「国
会記者会」に管理が委ねられている。

なるほど。権力からの物的な共同お手当を、仲良くシェアしているということか。だから、記者
会と国が仲良く並んで被告になっているんだ。ここがこの事件の肝だ。

≪「OurPlanet-TV」は、2012年7月、首相官邸前で行われた「反原発デモ」を撮影するため、
記者会に対して国会記者会館の屋上の使用許可を求めたが、拒否されたため、2012年9月、
東京地裁に提訴。2014年10月に請求が棄却され、控訴していた。≫という経過。

判決後の、「OurPlanet-TV」の白石草代表のコメント。

≪「控訴審で、国会記者会館が通常の記者室とは異なること、また、国会記者会に所属するメ
ディアが日常的に屋上で撮影していること
などに関する様々な証拠を提出して、私たちに対す
る使用拒否が差別的な取り扱いであることを主張したのですが、まったく聞き入れられない判
決で、非常に不当なものだと感じています。国会記者会館は、政権からの便宜供与であり、マ
スコミと政権との癒着の構造を表すシンボルです。
最高裁に上告するとともに、国会記者会館
に常駐する大手メディアの政治部が抱える課題について、広く社会に問う声を広げていきたい
と思います」≫

これじゃ、記者会に所属しているマスコミの特権ではないか。特権として認めるべき社会的意義
があるか。既存メディアは新しいメディアに対してどれほど社会的に優越して便宜を与えられる
べきなのか。わたしにはこの線引きがわからない。
なによりも、記者会と政治権力のこのもたれあいぶりは何だ。これを是認してしまう裁判所。
記者クラブを抱えている裁判所がこういう判断をするのは、当たり前なんだろうけど。

だから、国会記者会館の常任幹事会のコメントはこうなる。

≪「国会記者会館の使用に関する控訴人の具体的な権利を否定し、国会記者会の判断を改め
て正当と認めた穏当な判決だ。
国会記者会館を占有管理している国会記者会として、屋上使用
等については安全性と報道機関としての責任を果たせるかどうかの観点から引き続き対応してい
く」≫

まるでお役所のコメントだ。これが権力監視がどうのこうのとふだん立派なことを言っているのと
同じマスコミのコメントかと思うと、呆れる
が、それと同時に、つくづくそういうことなんだね、と納
得もしてしまう。権力監視は所詮、ごっこではないのか。一般の人々は、「○○新聞は信用でき
る」「△△新聞は信用できない」というような薄っぺらな評価を卒業して、1つ1つの記事を慎重に
読もう。

記者会が「ネットメディアもどうぞ」と言い出し、国が文句を言ってきても、「われわれの責任で対
応する」と啖呵を切ったら、それが更生の証しとみていいだろう。いつの日のことやら、だが。