30年後の迷宮~飯塚事件

1992年2月に福岡県飯塚市で起こった2人の女児(小学一年生)の殺害事件は、2年7か月後に女児の顔見知りだった久間三千年死体遺棄・殺人・幼女誘拐で逮捕され、終始全面否認のまま、一審、二審ともDNA鑑定などを証拠として犯人と断定され死刑判決を受け、2006年9月8日に最高裁で死刑が確定し、2008年10月28日に死刑執行された、すでに「終わっている」事件である。

この事件はDNA鑑定に問題があったことと、死刑確定から死刑執行までが2年という短さに驚いた記憶がある。死刑執行の順番は死刑判決確定した順でないことは実務としてわかっているが、それにしてもたった2年はあまりにも短すぎる。

 

岩田務弁護士、徳田靖之弁護士が久間死亡後の再審請求で悪戦苦闘していることは知っていた。

 

ドキュメンタリー映画『正義の行方』は、2022年4月にBS1スペシャルとして放映された『正義の行方~飯塚事件30年後の迷宮~』を映画化したもので、いま、東京、横浜、大阪、福岡で上映されている。

当時、警察官、新聞記者、弁護人として関わった人たちが、実名顔出しで、当時のそれぞれの考えや動きと、現在振り返っての考えを語る内容。

 

警察官はすでに退職していることと30年という時間が経過していることもあって、本心で話していることが画面から伝わってくる。刑事法廷や国賠訴訟法廷で警察官のうんざりする証言を散々見てきた者からすると、元とはいえ警察官がカメラに向かってこれほど誠実に語るのを見るのは初めてだ。

 

他社を抜いてスクープ記事を書いた記者、この記事にゴーサインを出した上司の記者、30年後に彼らの記事を検証する記者たち、当時から現在まで悪戦苦闘する弁護士。当事者の語りだけで映画は進行する。

 

三者が三様に裁判、死刑に納得していない。元警察官らは久間の有罪を口にするものの、どこかそう言わざるを得ない自分の立場を否定しきれないもやもや感がある。新聞記者は自分たちのした仕事を否定はしないが、疑っている。弁護士は自分たちの仕事の至らなさに苦しんでいる。

30年後の迷宮には弁護士だけでなく、元警察官、新聞記者もいた。

こんなドキュメンタリー映画をよく作れたものだと思う。必見!