マニュアルを読んでいなかった警察官

佐賀新聞2015年04月21日 10時05分
佐賀市で2007年、警察官に取り押さえられた直後に死亡した知的障害者の安永健太さん
=当時(25)=の遺族が佐賀県に損害賠償を求めた訴訟の控訴審の第3回口頭弁論が20日、
福岡高裁(金村敏彦裁判長)であった。≫

≪現場責任者だった警察官が証人尋問で、警察庁が配布した障害者対応マニュアルを「読ん
でいなかったと思う」
と証言した。≫

それのどこが問題か、というと。

≪マニュアルは知的障害者を犯罪者と間違えるなど不当な扱いを防ぐため警察庁が04年に
作成し、各都道府県警に配布。外見から障害が分からないケースがあることや、本人に安心感
を与える配慮の必要性を記載している。≫

警察官が日々対応する相手にはいろいろな人がいる。警察官はいま自分が相手にしている人
がどんな人なのか、どんな精神疾患があるのか、なんて知らない。だから、知的障害者を判別
するマニュアルを読んでおいて、間違った対応をしないようにする必要があるのだ。警察庁がマ
ニュアルをつくって現場の警察官に周知徹底しようとしたのは重要なことだ。

≪尋問で警察官はマニュアルの配布は「記憶にない」と述べ、職務などで知的障害者に応対し
た経験がない
と答えた。取り押さえ時の状況については「(安永さんは)精神錯乱状態と思った
が、知的障害とは分からなかった」とした。≫

配布していなかったのであれば、組織的に問題だ。
配布したとしても、現場の全警察官ひとりひとりが読んでいることを確実にする運用にしておか
なければ、配布しただけでだれも読んでいないかもしれない。こういう状態の組織の問題だ。

実情はきっとこの裁判で現場責任者として証言した警察官だけが問題警察官なのではない。
他の署の警察官も、他の都道府県の警察官も他人事と軽視、無視すべきではない。

≪次回は9月14日で、結審の予定。≫

次々回は判決。裁判所はどういう理論構成でどういう判断をするだろうか。