路上の弁当販売の規制強化は必要か?

路上販売の特徴は、特定の場所に店舗を構えていないことと、だから、
店舗経費がかからず、資本力のない人にもできることにある。経済的
弱者にとって参入しやすい商売方法だ。
過剰な規制は生業権の侵害だ。


東京都では、路上の弁当販売を、行商の一類型として、食品製造業等
取締条例(昭和28年)で規制している。


「行商」の定義は、「業として次に掲げる食品を人力により移動しながら
販売すること」(2条1号)。アイスクリームや豆腐などと並んで弁当が
挙げられている。


条例によれば、行商人になろうとする者は、知事に届け出て、鑑札と
記章の交付を受け(3条1項)、衛生基準を守らなければならず(6条)、
行商するときには鑑札を携行し、記章をみやすい箇所につけなければ
ならない(10条)。公衆衛生上必要であれば、知事は行商者に報告を
求め、検査をし、質問できる(12条)。必要があれば、営業の許可を
取り消したり、一定期間、営業を停止させることもできる(13条)。
規定はそつなくできている。


実害は生じているのか。食中毒の危険なら行商人に限ったことではない。
客としては、弁当に異常があったとき、問い合わせや抗議の連絡先が
わかればいい。大規模な食中毒事件が起こってしまったような場合、
東京都としては行商人を特定して原因究明ができないと、他の行商人
までとばっちりが及び、甚大な経済的損害を受けることになりかねない。
そんなことにならないようにするためには、路上で販売する弁当の外箱
シールに、製造者・販売者の連絡先と、東京都の担当課の連絡先を記載
することを義務づけるだけでいい。


規制の実効性を確認するために大量の監視員を雇う必要はないし、これを
越える過剰な規制を弁当の路上販売者についてだけ行うとすれば、規制の
動機は不純だ。