企業労働者の適性評価はこれでいいのか?

 昨日(11月21日)、日本労働組合総連合会(連合)が、秘密保護法案について、『「特定秘密の
保護に関する法律案」に対する連合の考え方』
という意見を公表した。

 問題意識は日弁連とほぼ共通しているが、その中で1項目。労働組合らしい指摘があり、
「なるほど」と思った。

 「3.特定秘密保護法における懸念・留意点への対応」の「(2)関連する民間企業への影響に
ついて」で、「特定秘密の保護を超えて、人事上の評価や異動などに影響を及ぼさないよう明記
する。」「プライバシー侵害や、意図的な思想調査が行われないよう明確な規定や具体的な対応が
必要である。」
と指摘している。

 が、ここにはもっと大きな根本的な問題がある。

 現在、自衛隊法施行令では、防衛省が企業に秘密保護をさせる方法は、契約事項に記載し、
これを実行させることにしてある。
それが、第113条の5(契約業者における防衛秘密の取扱いの
業務)の規定だ。

(契約業者における防衛秘密の取扱いの業務)
第113条の5  防衛省との契約に基づき防衛秘密に係る物件の製造又は役務の提供を業とする者
(次項及び第113条の1一において『契約業者』という。)は、次に掲げる基準に適合していなければ
ならない。

(1)  防衛秘密の保護上必要な措置に関し役員及び職員が遵守すべき規則を定めていること。
(2)  防衛秘密の取扱いの業務を管理する者を選任していること。
(3)  防衛秘密の取扱いの業務に従事する役員及び職員に防衛秘密の保護上必要な措置に関する
  教育を行っていること。
(4)  防衛秘密に係る文書、図画又は物件を保管するための施設設備その他防衛秘密の保護上
  必要な施設設備を設置していること。
2  契約業者との契約においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
(1)  防衛秘密の取扱いの業務に従事する役員及び職員の範囲の指定に関すること。
(2)  防衛秘密に係る文書、図画又は物件の作成、運搬、交付、保管、廃棄その他の取扱いの
  手続に関すること。
(3)  防衛秘密の伝達の手続に関すること。
(4)  防衛秘密の取扱いの業務の状況の検査の実施に関すること。
(5)  当該契約業者以外の者への防衛秘密の提供の制限に関すること。
(6)  防衛秘密の漏えいその他の事故が生じた場合の措置に関すること。
(7)  前各号に掲げるもののほか、防衛秘密の保護上必要な措置に関すること。

 これで何が不足だというのだろうか。

 これに対して、秘密保護法は行政機関の長の権限法である。
 法律で、適性評価項目を決めたら、企業も労働者もそれらの調査を受け入れざるを得ない。
拒否すれば、他の企業に仕事を依頼することになるのか、国の側で調査項目のチェックを甘くして
契約を結ぶことになるか、どちらかだ。後者は法律違反だ。

 しかも、秘密保護法第12条第1項によれば、企業の従業員に対する適性評価は、行政機関の
長が行なうことになっているから、企業として調査項目に口出しすることはできないし、取扱者に
決まっていない労働者の適性評価の個人データを行政機関が持つことになる。
取得した後の個人
データで、取扱者を失格とした労働者のものの取扱いをどうするかは、条文に書かれていない。
企業が持つかどうかも不明。

 しかも、適性があるかどうかを国の行政機関が判断することになるので、国の判断如何で企業側の
人事を変更しなければならなくなる。
労働者にとっても企業にとっても自分たちは「問題なし」と
考えても、国が「(適性評価の結果)ダメ」と判断すれば、法律上の制度だから、企業も労働者も
従わざるを得ない。

 これは労働者にとっても企業経営者にとっても大問題だ。
 これまで企業が責任を持ってやって来たことであるし、今後もそれでよいのではないか。