予想どおりの結末と予想外の現実と、これから

 昨日(12月6日)深夜、参議院自民党公明党の賛成多数で特定秘密保護
法案が成立した。

 民主党政権時代に法案は出来上がっていた。
 自民党はもともと秘密保護法を作ろうとしていたから、民主党政権が法案を
提出すれば、民主党自民党、さらに公明党の議員数からして、法案は簡単に
成立していた。
 それが、民主党政権は法案を提出しないまま、衆参両議院議員選挙で大敗し、
自民党が圧勝した。秘密保護法に賛成する勢力が維持されたわけだから、法案が
国会に提出されれば、いつでも法案は成立した。

 そして、自民党・安部政権が法案を国会に提出した。「アメリカとの情報共有の
ために必要だ」「日本版NSCのために必要だ」は、とってつけた理由。安部政権
だから法案が成立したのではない。その流れは民主党政権のときから、さらに
その前の自民党政権のときから続いていた。

 法案づくりも法案の成立も官僚の手の中にあった。
 官僚にしてみれば、いつ法案を国会に出すかというタイミングを図っていた
だけに過ぎない。

 官僚が国会(議員)を支配している構図は、法案第10条第1項1号イの規定に
はっきり表れている。

 9月3日に開始されたパブリックコメントの資料として添付されていた法律案
概要には、行政機関が管理する秘密情報を国会に出すか出さないかの裁量権
行政機関にある仕組みになっていた。
 これは、憲法が規定する国会の国権の最高機関性を否定するものだ。国会は
行政を監視する地位にあるはずなのに、法案では、行政機関が国会の監視を拒否
できるようになっているのだ。

 公明党自民党のヒヤリングでこの点を指摘した。議員はみな驚いていた。
他の政党にもこの点の重要性を訴えた。
 与野党を問わず、議員全員がこの条文を拒否し、議会が要求すれば秘密情報を
提供しなければならない、という規定に差し替えるのだと思っていた。

 しかし、国会はそうしなかった。条文を一部手直ししただけで、行政機関が
国会の監視を拒否できる構造は維持された。

 他のどの条項についてどれほど強い問題意識を持っていたとしても、国会が
行政を監視するという立場を放棄してしまうようでは、国会の自己否定だ。
憲法
否定しているのと同じだ。

 そして、法案は成立すべくして成立した。官僚の勝利だ。

 しかし、だ。
 当初、法案に反対するのは、共産党社民党などごく一部だけだろうと予想して
いた。
 それが実際には、民主党も反対にまわり、みんなの党、維新の会からも反対する
議員が現れた。この現実をだれが予想しただろうか。
 国会の建物の中だけの議論だったら、このようなことにはならなかった。新聞、
ラジオ、テレビなどが予想外に奮闘してくれた。インターネットの力も大きかった。
秘密保護法案の社会的認知度が高まるにしたがい、国民の間から慎重審議を求める
声が強くなった。結局、野党各党は、大樹である自民党に同化することなく、党独自の
考えを持ち、国民にアピールすることの重要性に目覚めた。

 国民が国会を動かす。法案を廃案にはできなかったけれど、これは予想外の展開
だった。

 法案を成立させないことが唯一の活動目標であるならば、昨夜で『祭」は終わりだ。
 
 しかし、法律にいろいろな問題があることはすでにはっきりしている。
 法律の附則規定によれば、1年以内に法律を施行するとのことだ。それまでに、
いろいろな問題が起こりにくくなるような仕組みに作り込んでいく必要がある。

 目を瞑っても、過去を悔やんでも現実は変わらない。これからが正念場だ。