情報保全諮問会議の公開という問題について

報道では、諮問会議が公開されていないことをもって大問題であるかのように報道している
ものがあるが、それはちがう。

第1回の会議の実情からすれば、情報公開法で規定する不開示事由に該当するような話は
なかったと記憶している。近日中に議事要旨と議事録が作成され、まず、議事要旨が公表され、
それほど間を置かずに、情報公開請求に応じて議事録が全面公開されることになるだろう。

第2回以降の会議の日程は決まっていないが、第1回目と同じようなやりとりであれば、手続を
公開しても差し支えないだろう。そうではなく、実質的な内容についてやりとりすることになる
とすれば、だれからどのような秘匿性の高い話題が出ないとはかぎらないので、手続を非公開に
するのはやむを得ないだろう。

しかし、この諮問会議は、目に見えないところで重大な動きが起こる宿命にある。

検討項目はかなり専門的で細かいこともあるので、大人数でひとつひとつの論点についてとこ
とん議論して決めて行くというやり方に馴染まない。
各委員が事務局から資料や情報の提供を
受けて、各自で与えられた宿題を検討し、自分なりの提案を事務局に提出するという感じになら
ざるを得ないだろう。それを事務局で整理して、諮問会議で意見交換するという進め方になる
だろう。この過程そのものは公開に馴染まない。

それにしても、どのような資料や情報を提供してもらえるのだろうか。
委嘱状には、「情報保全諮問会議における審議に参画すること」を委嘱するとあり、続けて委嘱
期間の2年が指定されているだけで、参加者には守秘義務の遵守を求めていない。特定秘密保護法
でも、内閣総理大臣が意見を求める有識者(第18条第2項等)に守秘義務を課していない。
有識者
国の組織外にいて、意見を言うだけという立場を想定しているから、国が守秘義務を負わせる関係
にはならないということだろう。

守秘義務が明記されていないからといって、政府事務局から提供された資料や情報を気安く外部に
出してしまうつもりはない。情報問題を長年取り組んで来た者としてその辺りの感覚はある。

むしろ、政府側において検討資料としてどれほどの資料や情報を提供してくれるのか、守秘義務
課して来ないことからすると、大した資料、情報は提供してくれないのではないかという危惧感が
ある。それでは、諮問された課題について実態に即した合理的な提案ができない。

実態に合わない不合理な提案は、必ずや、実務にとって「有害」(効率的な利用と的確な情報公開
の妨げ)になるはずだ。

諮問会議に参画することを委嘱され、特定秘密の基準や適性評価の項目などなど重要な事項について
具体的な提案をしようとする者に対してさえ、その判断材料が十分に提供されないということに
なれば、結局は、官僚が描いたとおりのことが決まるだけのことになってしまうだろう。

有識者の意見は、条文上、内閣総理大臣にとって聴くべきものではあるが、法的拘束力はない。
「それでは意味がない」。そう批判する人もいるだろう。

しかし、私はそうは思わない。内閣総理大臣が聴くだけでもいい。官僚が考えているものよりいい
提案だと受け止めてくれ、採用してくれるチャンスが持てればいい。官僚が自分たちの案を通そうと
しても、内閣総理大臣有識者の提案内容の方がより説得力があるとして選択できる可能性があれば
いい。
そのためには、守秘義務=罰則という縛りがない立場ではあるけれど、極力、十分な資料や情報が
諮問会議への参画を委嘱された者に提供される必要がある。

国民に対しても、いま、諮問会議のメンバーにどのようなことを検討してもらっているかという
ことを、できる範囲で具体的に公表して、諮問会議のメンバー以外の者でも意見が出しやすく
すべきだろう。そうすれば、パブコメのときに有意義な意見がたくさん集まって来る可能性が
高くなる。
それは法律の質を高めることに繋がる。

法律の枠組みに重大な問題があるだけに、これからの手続の進め方は国民に対してできるだけ
公表・公開してゆくべきだ。