特定秘密保護法に規定されていない(!)情報保全諮問会議

情報保全諮問会議の委員を引き受けた。
特定秘密保護法に基づいて情報保全諮問会議は設置されたように説明されているが、
特定秘密保護法には「情報保全諮問会議」という名称は出て来ないし、合議体を諮問
先とする規定もない。

では、法的根拠はないのか?
政府事務局の説明では、特定秘密保護法第3条第1項、第18条第2項・第3項、附則第3条
が根拠規定になっているとのことだ。

しかし、これらの条文を読むと、「第18条第2項に規定する者」(第3条第1項)、
「我が国の安全保障に関する情報の保護、行政機関等の保有する情報の公開、公文書
等の管理等に関し優れた識見を有する者」(第18条第2項)、「前項に規定する者」
(第18条第3項)と書いてある。諮問先は合議体ではなく、「者」になっている。
「者」は団体ではなく、個人だ。「内閣総理大臣は・・・者・・・の意見を聴かな
ければならない」のだ。

合議体の意見を聴くということであれば、わたしの意見は合議体で多数を形成しない
可能性が高い(かもしれない)から、意見として記録されず、内閣総理大臣が考える
素材にならない。それなら委員になる意味がない。
この一般論はわたしだけでなく、他の委員の意見についても当てはまる。

情報の管理の適正化を具体化しようとするとき、何が正しいかを多数決で決めることは
できない。
「多数」と言っても、その中身を掘り下げていくと意見がわかれること
だってある。「全員」の意見を1つにまとめようと無理をすれば、7人の委員を集めた
意味は却って大幅に減殺されるにちがいない。

すぐに採用されない意見であっても、記録されていることによって、内閣総理大臣
後から見返して、多数意見にならなかった意見を改めて選択することができる。

特定秘密保護法内閣総理大臣の諮問先を合議体ではなく「者」にしたことには、
このような深い考えがあると理解している。
これに沿った運用がなされるかぎり、わたしのような少数派(?)が委員でいる意味は
あると考えている。

それから、諮問会議が非公開になっていることについて。
議論の中身はなるべく国民に公開されなければならない。
事務局からは事前に、「会議は非公開」という提案をされた。
ちょっと引っかかったけれど、他の委員がどういう考えを持っているかわからなかったし、
どういう意見が出ることになるのか予測がつかなかったし、ということで、特に異論を
挟まなかった。

その代わり、議事録は発言者名を記載して作成すること、情報公開法の不開示事由に
該当しないかぎり公開すること、議事要旨もできるだけ具体的なものを作成・公表する
ことをお願いした。

この手の議事録は公開度を極力高めなければ、中でいくらいい議論をしていても、社会
の信用を得られない。委員になった人たちは皆、自分の意見に責任を持って発言する
人のはずであるから、原則として公開されるべきだ。

実際にどうなるかは、わたし自身、情報公開された文書を見てみなければわからないの
かもしれない。公開度が低すぎるようであれば、一委員として事務局に修正を求める
つもりだ。

今後、事務局から出される課題の多さ、これに伴う資料の多さ、分析検討作業の多さを
考えると、各委員が個別に検討する時間がかなり多くなり、諮問会議は頻繁に開催される
ことにはならないだろう。

わたしは、法律が施行されることになったとしても、暴走することが少なくなるよう、
できるだけのことをしようと思っている。