テロか?刑法犯か?

 毎日新聞の25日付夕刊記事によると、
 23日、ニューヨークで、繁華街をパトロール中の警察官4人に向かって斧を
持った男(32)が突然襲いかかり、2人に切りつけ、その場で射殺れた。
 ニューヨーク市警は24日、イスラム教に改宗した男による「テロ行為」と断
定したという。

 しかし、23日に事件があってその翌日に市警が「テロ」と断定しているのは
疑問だ。

 男がイスラム教に改宗していたとのことだが、イスラム教徒のほとんどが「イ
スラム国」に所属しているわけでもなければ、賛意を表しているわけでもない。

 個人的な暴走事件か組織的な背景のある「テロ」事件かでは、捜査範囲が
全く異なる。
前者では暴走した個人について中心的に捜査すればよいが、後
者ではむしろ事件の背景にどのような(政治)組織があり、どのように分担連
携しているかを捜査する必要がある。

 記事によれば、
 男は、カナダのテロ事件の動画やサイトを閲覧していたことが確認されたと
いう。

 しかし、これは世界中の人が関心を抱いて観ていたはずで、わたしも観てい
た。この点から「イスラム国」に賛同しているとみることはできない。

 記事によれば、
 男とイスラム過激派組織「イスラム国」など国際組織との接点は不明、との
こと。
 組織性が不明!

 記事によれば、
 男には過去6回、家庭内暴力で逮捕歴があったというから、粗暴な傾向がも
ともとあったのかもしれない。

 記事には、海軍を2003年に除隊処分になっているとあるが、その後の職業
が書いてない。無職なのかもしれない。
 同居の家族は父親だけらしい。

 組織性があれば仲間がいて連携しているはず。連絡を取り合っているはず。
それがないとすれば(どうもそうらしい)、無職で孤独で未来を展望できない男
の自暴自棄の暴走による刑事事件(殺人未遂、傷害)として扱うべきだ。

 ニューヨーク市警がどういう意図どういう文脈で「テロ行為」という表現を使っ
たかはわからないが、犯罪の分類としては単なる刑法犯だったのではないだろ
うか。

 カナダの事件も刑法犯として扱うべきかもしれない。
 その上でなぜ彼らが暴走したのかを検証すべきだ。同様の男たちが続々と出
て来ないようにするために。「イスラム国」を押さえ込めば、同じような事件は起
こらなくなるということではないと思う。