「堀越だから…」のどこが悪い!?

 宮藤官九郎脚本のTBS系連続ドラマ「ごめんね青春!」(日曜午後9時)
の、登場人物のせりふ1つに、堀越高校(東京都中野区)がTBSに抗議し
た。TBS側は誤解を与える表現があったとして公式サイトで謝罪。

 産経新聞記事(11月12日(水)20時10分配信)によると、
 ≪問題となったのは、10月26日に放送された第3話の一シーン。生徒
から勉強を教えるよう頼まれた主人公の義理の姉が「それは無理。あたし、
堀越だから」と出身校と受け取れる固有名詞を出して拒否した。
 堀越高校を母校とする芸能人は多く、ドラマで描かれている義理の姉は
元グラビアタレントという設定だった。こうした表現に対し、堀越高校がTB
S側に抗議。≫

 ≪今月6日付の日刊ゲンダイは、校長が「在校生は一生懸命学業に励ん
でいる」「生徒の名誉を傷つける、ああいう誤解を招くようなセリフをテレビ
局側がそのまま放送してしまったことは誠に遺憾」
などと取材に応えたこと
を報じていた。せりふの内容が学校や生徒の名誉を傷つける恐れがあると
判断したとみられる。≫

 ≪TBS側は番組公式サイトに「お詫(わ)び」を発表。「校長先生から、今
現在の学校についてのご説明もいただき、私どももお詫びすべきことと考
えました。このような表現は、日々の学業に励んでいらっしゃる在校生の
皆様、今後の進路として考えている受験生を始めとして、先生、保護者の
皆様、学校関係者の皆様にご迷惑をおかけするものでした
」などと謝罪し
た。≫

 堀越学園が「沈黙するのはまずい、抗議しておかなければ」と考え、抗議
するのは当然だ。
 が、TBSが謝罪してしまったのは疑問。この台詞を言った役者まで、少し
かもしれないけれど、悪い印象になってしまう。

 NHKの朝ドラ「あまちゃん」では、薬師丸ひろ子は最終回までずっとオン
チ役だった。
かつての薬師丸ひろ子を知っている年配の人たちには、冗談だ
とすぐにわかるが、かつての彼女を知らない若い人たちからは、「あの人、オ
ンチなんだ」とずっと思われていたかもしれない。最終回のオチを薬師丸ひ
ろ子が知らされていたかどうか知らないけれど、知っていて観ている者にと
ってはすごくおもしろかった。
 AKB48秋元康も完璧におちょくられていたなあ。

 「それは無理。あたし、堀越だから」と言いながら、それ以外の場面も含め
て魅力的な役になっていれば、「堀越、カッコいい!」となるのだ。

 表現で飯を食っている者は、言葉尻にケチをつけて屈服させるようなこと
をしてはいけない。

 記事には、元民放ディレクターで法政大教授の水島宏明氏(ジャーナリズ
ム論)と、元民放プロデューサーで同志社女子大教授の影山貴彦氏(メディ
ア論)のコメントが並んでいる。

 水島氏「今回のせりふも宮藤さん流の“毒”の効いたジョークの範囲内に
受け取った」「作品全体で見れば、学園ものとして質の高いドラマである」

 同感。

 影山氏「もっと慎重になるべきだった。固有名詞を出さなくても、宮藤さん
の意図を反映した表現は十分、可能だったはずだ」

 疑問。
 記事では影山氏も「制作現場の萎縮につながってはいけない」と言ってい
るのだそうだが、「注意を払い、工夫を凝らせばまだまだできることは多い
はずだ」は、萎縮の勧めだ。