京大生、警視庁公安部、令状裁判官の不思議

 産経新聞記事(11月13日(木)15時38分配信)によると、
 ≪東京・銀座でデモ行進をしていた京都大生の男ら3人が機動隊員を暴行
したとして公務執行妨害容疑で逮捕された事件で、警視庁公安部は13日午
後、京大の学生寮熊野寮」(京都市)を家宅捜索した。公安部は11日にも、
関係先として中核派の拠点「前進社」(東京都江戸川区)を家宅捜索し、機関
紙など約50点を押収しており、事件の背景を詳しく調べている。≫

 京都大学学生寮を、京都府警ではなく、警視庁(公安部)が家宅捜索した。
 警察法では、都道府県単位で仕事をしているはずの警察だが、公安事案に
ついては、都道府県の縄張りに関係なく、警視庁(公安部)が手を出して来る。
 京都府警はきっと、蚊帳の外。

 わたしも弁護士会や市民団体が主催するデモ行進に参加することがあるが、
周りにいる警察官に暴行しようと思ったことはないし、参加者にそういう人はい
なかった。京大生はどうして銀座のデモ行進で機動隊員に暴行なんかしたんだ
ろう。どんな必要性があったのだろう。

 そんなことをすれば、警視庁公安部に目をつけられ、現行犯逮捕されること
はほぼ確実。そこを口実に家宅捜索までされかねないリスクも予測できたは
ずだ。そして、そのとおりになった。まるで、京大生らと公安が、お互いに自分
たちの存在を社会にアピールするためのやりとりに見える。

 デモ行進のときの暴行だけが問題なら、その立証のために家宅捜索は必要
ない。
背景事情を把握するため、と言ったところで、一瞬の暴行についてその背
景をさぐる意味がどこにあるのか。さぐったところで、京大生が反省を深めるとは
思えない。情状にも意味がない。
 家宅捜索は、端的に、公安部が中核派の機関紙を集めて、仕事をした体裁
を作ることに目的があるのではないか。
その機関紙の中に日本中を震撼させる
ような危険なことがたくさん書いてあるなら、広く国民に緊張感を持ってもらうた
めに内容を公表すべきだ。公表しないとすれば、集めることだけで目的を達して
いるということだ。

 こういうことのために、裁判官が捜索差押許可状を出すのはどうかと思う。
 裁判官は、捜査の必要性と個人のプライバシー保護の調整を考えた上で強
制捜査を許す判断をすべき立場だ。
だから、憲法上も独立の地位が保障され
ているのだ。そういう地位に置いてもらいながら、こんな仕事の仕方はない。
法が期待している仕事の仕方から明らかに逸脱している。
 

 京大生、警視庁公安部、令状裁判官。みんな、不思議だ。