このままではまずい、韓国

 わたしの妻は韓流ドラマのファンだ。
 わたしも、『チャングム』は同業者幾人から「面白い」と言われて、「そうなのか?」と
思いながら、妻に付き合ってときどき観ていた。料理や薬草の話は含蓄があってなか
なかおもしろかったが、あらゆる登場人物の思考(相互の信頼と不信の繰り返し)や言
動、行動の出鱈目ぶりに、ついつい「あり得ない」を連発していた。妻は「じゃあ、観な
ければ(いい)」と素っ気ない。で、以後、わたしはほとんど韓流ドラマを観ていない。
妻は録画してひとりで楽しんでいるらしい。

 が、最近、韓国のニュースを観ていると、韓流ドラマに出て来る王様やお妃、重臣
ちの出鱈目ぶりを思い出させるような人が本当にいるらしい、と愕く。

 旅客船セウォル号の沈没事故での船長ら乗組員のとった行動。さすがに殺人罪には
ならないとしても、乗組員が揃ってこんな行動選択をするかと愕く。
 マスコミ報道にやたら激怒し検察まで動かしてしまう大統領。オバマ米大統領も負け
ていないが、これにも愕く。

 そしてつい最近は大韓航空前副社長がとった行動。一体何様!?
 しかも後日談もすごい。
 まるで、韓流ドラマの世界だ。韓国では一般の人たちは、韓流ドラマをあり得ないスト
ーリー展開として観ているのか、あり得る展開として観ているのか、と、ふっと思った。

 日本テレビ系(NNN) 12月16日(火)14時51分配信によると、
 ≪大韓航空の前副社長が乗務員のサービスに激怒し、動き始めていた航空機を引
き返させた問題で、韓国の国土交通省は前副社長を刑事告発すると発表した。

 ≪韓国の国土交通省は16日、乗務員や乗客から聞き取り調査を行った結果、趙顕
娥前副社長が航空機を引き返させる際、機内で大声をあげたり暴言をはいたりした事
実が確認されたと明らかにした。これらの行為は航空保安法違反の疑いがあり、16日
中に検察に告発するとしている。また、趙前副社長は飛行機に乗る前にワインを1〜2
杯飲んだと話したという。≫

 日本の法律である、航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年五月十八
日法律第六十八号)では、「暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵
不能の状態に陥れて、航行中の航空機を強取し、又はほしいままにその運航を支配
した者は、無期又は七年以上の懲役に処する。」(1条)と規定している。
 離陸しようとしていた航空機を傲慢な言動で引き返させた「犯人」(副社長)の行為は、
「脅迫」によって「人を抵抗不能に陥れて」「ほしいままにその運航を支配した」(「運航」
が離陸前を含むとすれば)犯罪であり、一種のハイジャックだ。
こんなことを副社長が
するなんて!  

 「機内で大声をあげたり暴言をはいたり」したら、航空機を下ろされるのが常識。飛行
機に乗る前の注意書きや、飛行機に乗ってからの注意書きにある。わたしは地方出張
で毎月2,3回飛行機に乗るが、こんな人に遭遇したことは1度もない。それが韓国の航
空会社では、「機内で大声をあげたり暴言をはいたり」した張本人が副社長で、しかも、
その副社長が飛行機内に乗ったままで乗務員が降ろされる
。考えられない出鱈目ぶり
だ。

 ≪趙前副社長は先週、暴言については「初めて聞く話だ」などと否定していた。≫

 す、す、すごい。すごすぎる。目撃者がたくさんいるというのに、どうしてこういうことが
言えるのか。

 ≪一方、趙前副社長から暴言を受け、旅客機から降ろされたサービス責任者は問題
発覚後、大韓航空からウソの証言をするよう求められた
と証言。≫

 会社がトンデモ副社長のために従業員に虚偽供述をさせようとしていた。やれやれ
だ。この会社。大ごとになったことで、このサービス責任者をクビか左遷にするのではな
いだろうか。一連のニュースの嵐が過ぎ去った後に、ひっそりとそんな展開になるかもし
れない。

 ≪国土交通省は、これを事実と認め、大韓航空に対し、航空法違反の疑いで運航停
止や課徴金などの処分を検討している。≫

 この事件の一連の経過は、大韓航空だけではなく、韓国(企業)全体の信用を失墜
させた。
それは、趙前副社長の一連の傍若無人ぶりが単なるわがままや、親や一族の
甘やかしの限度を超えて、「韓国社会ではこういう人が大企業の副社長(やがては社
長)になれるのか」
と印象を世界に与えてしまったからだ。

 韓流ドラマのストーリー展開はどうでもいいが、韓国社会は今回の事件を趙前副社長
個人の資質の問題に矮小化して済ませるべきではない。