週刊誌が少年の実名と顔写真を掲載したが

 今日発売の『週刊新潮』が川崎中1殺害事件の被疑者のひとりである18歳少
年の実名と顔写真を掲載した。

 買って読んだ。
 記事は、18歳の少年の生い立ちやこれまでの問題行動などをまとめた内容だ
った。

 毎日新聞 3月4日(水)20時6分配信記事によると、週刊新潮編集部の考えは、
 ≪「事件の残虐性と社会に与えた影響の大きさ、18歳の少年の経歴などを
総合的に勘案し、実名と顔写真を報道しました」「インターネット上に早くから実
名と顔写真が流布し、少年法が形骸化していると言わざるを得ない状況も検討、
考慮した」

だそうだ。

 インターネット上に早くから実名と顔写真が流布し、少年法が形骸化していると
いう指摘は、かなり当たっている。が、それだけで、「だから、週刊誌に出してもい
いじゃないか」は、問題提起として軽すぎないか。

 記事で紹介している18歳の少年、B、Cの発想や行動、言動は、少年事件に出
て来る同種の少年たちと同じパターン。集団暴行事件に関わる少年たちの事件
前の生活ぶり、事件を起こした後の言動はどれも大体こんな感じだ。
別に珍しい
ことではない。

 だから、ほかの少年事件と比べて、なぜこの事件では18歳の少年の実名と顔
写真を出すことにしたのか。事件そのものの特異性ではなく、マスコミ報道が過
熱している事件だから出したということではないか。

 わたしが気になっていた点は、18歳の少年の実名と顔写真ではなく、今回の事
件前に18歳の少年の自宅に数人の先輩グループが押しかけ警察沙汰になった
ときの警察の対応についてどう書いているかだ。

 記事にはこうある。
 「で、家の中に入って(18歳の少年)(記事では実名)と話をした警察官は俺ら
にこう言った。「(18歳の少年)君、上村君と仲良さそうに電話で話してたよ。(1
8歳の少年)君も謝ってたし、上村君も許してた。だからこの件は終わりね」と。(
18歳の少年)が仲良さそうに話してたのは、偽装に決まってる。警察もバカだよ
」 

 毎日新聞 2015年03月03日 06時00分(最終更新 03月03日 09時18
分)によると、そのときの様子は、
 ≪事件発生の約1週間前、上村さんの知人グループが上村さんへの暴行を抗議
するため、逮捕された18歳の少年宅に押し掛けトラブルになった際、110番で駆
け付けた神奈川県警川崎臨港署員が、暴力を受けていた上村さんからの聞き取
りを電話で済ませ、名前も確認していなかった
ことが県警への取材で分かった。
上村さんが「大丈夫」と話したため、知人グループを帰して処理を済ませたという。≫
 ≪署員は現場でグループと18歳の少年の双方から事情を聴いた上、暴行の有
無などを確認するため上村さんに連絡した。その際、自分の電話でなく、18歳の
少年のスマートフォンから電話をかけた
という。署員が話を聞いたところ、上村さ
んが「仲直りしたから大丈夫」と答えたため、署員がグループに帰るよう指導し、そ
の場を収めた。この時、署員は電話で上村さんの名前を確認することをしなかった
という。≫

 救いがたい手抜き仕事。少年たちに完全に手玉に取られている。これは仕事に
なっていない。

 かつて、少年課の警察官は地域の問題あり少年たちのことをよ〜く知っていた。
まるで友だちのように話していた。だから、事件が起こりそうなときに介入して事件
化を防ぐこともできた。また、いい方向への励ましもしていた。

 警察官が少年たちひとりひとり別々に会って顔色を見ながらそれぞれから詳しく
話を聞いていれば、上村君が18歳の少年と関わりを持ちたくないことを知ったは
ずだ。その上で、関わりを絶つようにするにはどうしたらよいかを上村君に助言し
励まし、いつでも相談に乗れるようにしていれば、ほぼ確実に上村君は18歳の少
年から逃げ切ることができた。18歳の少年にとっては殺人者にならずに済んだ。
 警察官の対応の仕方が、上村君の生死を分けたと言ってもいいだろう。

 事件の背景に警察官あり、だ。
 問題大ありの対応をした警察官と、この警察官の報告でよしとした上司の警察官
たち。彼らの杜撰極まりない仕事ぶりは、上村君の命を基点に考えると殺人幇助
に匹敵する非道だ。しかも大人だ。なのに警察組織の中に埋没して、決して表に
現れない。
マスコミも決してこれを暴こうとしない。
 この警察官たちこそ実名と顔写真が掲載されるべきではないかという問題提起
は、どのマスコミからも出ないのだろうか?