復興金百億円ナゼ?

 今日の夕方、TBSテレビのニュース番組『Nスタ』で、ある市の市長の復興金の
使い方の無法ぶりを紹介する。番組づくりを少し手伝ったので、番組をわかりや
すく観てもらうために少しだけ予備知識を紹介する。

 市長が議会(議員)を取り込んで、復興金を食いものにするという構図はわかり
やすい。みんなで山分けの構図。
 しかし、今日、番組で紹介する市の場合はちがう。市長が、議会の抗議を無視
して、100億円にもなる大型工事を独断専行、専決処分としてやってしまおうと
している。

 これだけの大型工事を議会の承認なしでできてしまったら、独裁政治だ。

 法律がこんなことを許すのか。
 地方自治法は独裁政治などもちろん認めない。
 しかし、行政実務では例外的な緊急事態が起こることがあるので、少しだけ例
外を認めている。それが専決処分を規定する地方自治法179条。

 1項では、
 1)普通地方公共団体の議会が成立しないとき
 2)第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき
 3)普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急
を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めると

 4)は議会において議決すべき事件を議決しないとき
のいずれかに該当するときだけ、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべ
き事件を処分することができる。

 その代わり、専決処分をしたときには、首長は次の議会に専決処分を報告して
承認を求めなければならない(3項)とすることで、事前の承認を得なかったことと
のバランスを採っている。ただ、爾後の承認が得られなくても専決処分は無効に
なるわけではないので、濫用の危険は消えない。爾後の承認は政治的な牽制と
いう意味合いを持つに過ぎないから、首長が議会を軽視していれば、無視を決め
込むことだってできてしまう。

 1)2)4)は要件が類型的に明確なので、濫用の余地がない。これに比べて3)
の規定はちょっと抽象的。だから、首長がここに付け込んで濫用する。

 今日の番組で紹介する市の場合もこれ。
 大災害時の緊急時対応ならともかく、大型公共工事が「特に緊急を要するため
議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」に該当する
はずがない。
市長はこれに該当すると言い張っているというのだから呆れる!
 市長の常軌を逸した対応には、なにか大きな闇があるとしか考えられない。

 ちなみに、地方自治法179条1項但し書「ただし、第百六十二条の規定による
副知事又は副市町村長の選任の同意については、この限りでない。」という規定
は、2010年、鹿児島県阿久根市の市長が専決処分を濫発し、そのときに副市
長の選任まで専決処分してしまったことに驚いた総務省が慌てて入れた規定だ。

 本当は、これだって、1)から4)に該当しないから、副市長の選任を専決処分
ですることなんて許されない。
それでも超ワンマン首長だと(まあ、これも住民が
選んだわけだけど)、「法律にダメって書いてないじゃないか」と開き直る。で、わ
ざわざ条文として書いたということだ。

 が、これがまた落とし穴になるわけで、今日の番組で紹介する市の市長は、「
項但し書には、副市長の選任だけダメだと書いてあるのであって、百億円の公
共工事はいいんだ
」と開き直るのかもしれない。但し書で、具体的な場合を書い
てしまうと、かならずこういう輩が現れる。
 それが政治。そういう人を住民たちは市長に選んだ。「選んだときは知らなかっ
た」は弁解にならない。その後起こったいまの事態については、「まさかこんなこ
とをする人だとは思わなかった」と感じている住民も多いのではないか。
 そうだとすれば、議会だけに市長批判をさせ、住民たちは沈黙を続け傍観する
というのはずるい。
それは市長の暴走を応援していることになる。

 市のホームページの市長は爽やかそのもの。その市長が何をしているか。その
市の住民だけでなく、多くの人に観ていただきたい。明日はわが身、ということで。