防犯カメラ映像への過信

朝日新聞デジタル 12月9日(水)13時17分配信
≪福岡県警は、福岡市の男性(36)を窃盗容疑で誤認逮捕したと9日発表した。
男性の知人で同市早良区の建設作業員の男(33)を新たな容疑者として、同日
書類送検した。防犯カメラの映像を見誤ったという。≫

カメラに防犯機能はない。ただただ対象物を撮影するだけ。
街中に設置されている動画撮影カメラの設置目的は人の行動監視が主。

≪早良署によると、同区原6丁目のコンビニエンスストアで9月29日夜、乾電池
1パック(約600円)が万引きされた。署が映像を確認すると、乾電池を盗んだ
男が車に乗り込む様子が映っていたという。≫

警察官が確認したのは、コンビニが設置している監視カメラの映像。
1つには、乾電池1パック(約600円)が万引きされた場面が映っている。どこま
で対象者の識別判断が可能な映像だったか。画面はカラーか白黒か。どういう
角度から犯人のどういう姿が映っているのか。頭部、顔は映っているのか。
もう1つには、乾電池を盗んだ男が車に乗り込む様子が映っていた。ということは、
コンビニ店は店内だけでなく、店の外に外向き(駐車場が映る?)にした監視カメ
ラがあって、それに映っていたということか。その画像でも個人の識別はどれほど
できるものだったのだろうか。

映像だけで被疑者として特定するには、かなりの確度で同一性が判別できる映
像である必要がある。

≪署は車の所有者である男性を割り出し、任意で事情を聴いたところ、男性は容
疑を否認。だが署は映像の男に似ていると判断し、今月3日に逮捕した。≫

車の運転者は常に車の所有者とはかぎらない。慎重な判断が必要だ。
「男性は容疑を否認」とあるが、どのような内容の否認をしたのか。そこが記事に
は書かれていない。
「映像の男に似ている」とは具体的にどのような事項だったのか。記事では全く
言及していない。

≪その後、当時男性が知人の男に車を貸していたことが判明、署は男性を7時間
後に釈放
した。知人の男は容疑を認めているという。≫

「その後、当時男性が知人の男に車を貸していたことが判明」とあるが、車の所有
者は最初からこのことを弁解していたのではないか。
車の所有者がこの点を黙っ
ていて、警察が独自の捜査で、当時男性が知人の男に車を貸していたことを確認
できたということは考えにくい。逮捕してから調べたら、車の所有者の言ったとおり
だった、ということではないだろうか。

≪早良署の香月英志副署長は「深くおわびするとともに、再発防止に努めたい」と
コメントした。≫

謝っているのは副署長。署の最高責任者である署長は謝らないんだ。署長が出る
ほどのことではない、ということか。

車の所有者が真相を隠していたのなら、副署長が謝る筋合いではない。深くお詫び
をしているのは、警察官が車の所有者の弁解に耳を傾けなかったからにちがいない。
警察が弁解を聞いてくれなかったことによる警察不信は一生消えないだろう。
「再発防止に努めたい」って、具体的にどうするんだろう。言葉だけのような気がす
る。

監視カメラが急増し、事件があれば、真っ先にやることは監視カメラ映像を集める
ことと、その映像を分析することのみ。聞き込み? そんなもの、古い古い、て感じ。
それがいまどきの警察。現場の警察官はすっかり監視カメラ(の映像)に頼るよう
になってしまった。自分の目の前にいる被疑者の弁解に真摯に耳を傾け、真相を
解明する能力が確実に極端に落ちて来ている。そのことの危機意識が警察組織
にはあるのだろうか。