相模原事件受け防犯強化もハコモノ行政か?

時事通信 8月11日(木)7時23分配信
厚生労働省は10日、相模原市の障害者施設で発生した殺傷事件を受け、施設の防犯強化に取り組む
地方自治体に財政支援する方針を固めた。≫

ハコモノ行政は早い。

≪不審者の侵入防止などに必要な施設改修をした場合、施設を設置する自治体に費用を補助。関連経
費を2016年度第2次補正予算案に盛り込む方向だ。≫

「不審者の侵入防止などに必要な施設改修」とはどういうものだ。
これで施設を頑丈な高い塀で取り囲み、施設の内外に無数の監視カメラを設置し、窓ガラスは割られない
ように鉄格子を入れて、扉はすべて鉄製にして、常にロックされた状態にする。こうすれば、きっと安全だ。
だが、これは刑務所に似ている、どころか、そのものだ。そういう方向性に進みそうな気がする。
それでだれが喜ぶ、だれが安心する。

≪事件は7月26日未明に発生。施設に侵入した元職員の容疑者が入所者を次々に刃物で刺し、19人が
死亡、広く福祉関係者に衝撃を与えた。そこで同省は今回、障害者施設だけでなく、事件を教訓に施設を
緊急改修する保育・高齢者施設、病院や診療所も支援。いずれも費用の半額を国が補助し、対策強化を
急ぐ。≫

国の補助金を使って対策強化を急ぐ必要があるのか。
同じような事件が続いたら困るからなのだろうが、それだったらなおのこと、どういう情報連携をすれば
被害を防げたか被害を小さくできたかを分析検討し、その結果を周知する方が早いし、カネがかからな
い。中途半端な拙速工事は公費の無駄遣いになりかねない。

≪事件をめぐり同省は、有識者による検証チームを設置し、今秋の再発防止策の取りまとめに向け議論
を進めている。ただ、政府内では「検証結果を待たずにできることから対応を」と求める声もあり、
同省は施設の安全を強化するハード面の整備を急ぐことにした。≫

「検証結果を待たずにできることから対応を」というと、まずハード面、というのは余りにも安易ではない
か。有識者による検証チームにはどんな人がいるのか知らないが、同種の事件が頻発しているわけでは
ないから、傾向分析から対策を導き出すことはできない。何となくもっともらしい思いつきの寄せ集めに
なるおそれがある。
たった1つの事案から再発防止策を考えるのは簡単ではない。たった1つの事案であ
っても、関連のありそうな分野と人々について多方面から批判的に深く検討するならば、実効的な対策
を提案できるかもしれない。
短時間で結論を出そうとすると、きっと失敗する。