小泉進次郎氏は民主主義が嫌い?

毎日新聞2019年12月28日

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(16)に対する小泉進次郎環境相の発言が波紋を広げている。小泉氏はグレタさんらの活動について「大人たちに対する糾弾に終わっては未来がない」とし、地球温暖化対策への取り組みは全世代を巻き込むことが重要だとの認識を示した。これに対し、賛同意見がある一方で、「具体案を一つも出さない大人が国際的な活動をしている子どもを説教している」などと批判も噴出する事態に。気候変動への危機は「世代間対立」を深めてしまうのだろうか。

 小泉氏は20日の記者会見で「大人を糾弾するのではなく、全世代を巻き込むアプローチを」と強調。」

「大人を糾弾するのではなく、全世代を巻き込むアプローチを」という小泉進次郎氏の言い方は、敵対者に勝てない側がよく使うレトリックだ。グレタさんの口封じと、グレタさんの言葉に耳を傾けるなという世界へのメッセージ(世界は相手にしないだろうが、日本国内では「さすが!」という小泉ファンからの声が出るのだろう、きっと)が狙いだ。この言葉には問題の解決の具体策は何も示されていない。それなのに、小泉進次郎氏の方がグレタさんより「上」という錯覚を与える。

小泉進次郎氏の言い方を逆にすると、「全世代を巻き込むアプローチがないのに、大人の糾弾をするな」になる。グレタさんには「全世代を巻き込むアプローチがない」のはそのとおりだろう、と言うか、だれにもないのだが。だれにもできそうにないことを条件にして、それをしないで大人を糾弾するな、というのは、端的にいえば、「グレタ、黙れ!」なのだ。

世界中で目立っているグレタさんを名指しでこういうレトリックを使って口封じをしようとする、いつも目立つことばかり考えている小泉進次郎氏は民主主義(「他人の声に耳を傾けよう」)が嫌いらしい。