「どこが残酷」に同感
時事通信 5月20日(水)20時37分配信
≪「いったい、追い込み漁のどの部分が残酷なのか」。日本動物園水族館協会(JAZA)の荒井
一利会長は20日夕、追い込み漁によるイルカ調達禁止を発表する一方、国際社会からの批判
に疑問を呈し、「協会が追い込み漁や捕鯨文化を批判しているわけでは決してない」と強調した。≫
日本の水族館で飼育されているイルカの調達方法は世界動物園水族館協会(WAZA、スイス)
の倫理規定に反するとして、日本動物園水族館協会の会員資格停止が問題になっていた。
会員資格が停止になると、海外から希少動物の入手ができなくなってしまう。それは困るというこ
とでの、苦渋の選択。「協会が追い込み漁や捕鯨文化を批判しているわけでは決してない」という
弁解には、本意でないことがはっきり出ている。
≪東京・霞が関の環境省で午後6時から開かれた記者会見。海外メディアを含む60人以上の報
道陣が詰め掛け、関心の高さをうかがわせた。≫
イルカの追い込み漁は、太地町の漁の様子を隠し撮りした米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」
(2009年)がきっかけで国際的な批判を浴びるようになっていた。
イルカの追い込み漁は隠れてやっているわけではない。地元の漁師がまっとうな仕事としてやっ
ていることだ。その実態を知りたければ、取材を申し込んで、疑問点を何でもぶつけて回答を得
ながら、作品をつくればいい。ところがこの作品は「太地町の漁の様子を隠し撮りした」ものだ。
つまり、最初から結論ありきでつくっている作品なのだ。ドキュメンタリー映画の名に値しない。
こんな作品で世界の世論が形成されてしまうというのはとんでもないことだ。海外メディアはこの
点をどう考えているのだろうか。
≪荒井会長は「追い込み漁は残酷な手法ではないと一貫して主張してきたが、残念ながら理解し
てもらえなかった」と納得がいかない様子。世界動物園水族館協会(WAZA)に対し、「どこが残
酷なのか具体的に指摘してほしいと何度も申し上げたが、回答はなかった」と無念さをにじませ
た。≫
世界動物園水族館協会は「調達方法」を問題にしている。追い込み漁のイルカを分けてもらうこと
のどこが反倫理的なのか。分けてもらうこと自体は反倫理的ではないはずだから、追い込み漁が
反倫理的だということになる。追い込み漁をネット動画で確認した。画面下には「残酷」と書いてあ
った。そう言われればそうだが、では残酷と残酷ではない境目は何か。「残酷」とは何か。牛でも
豚でも馬でも羊でも屠殺の現場を見れば、残酷だと感じる人はいるのではないか。生まれてまも
ない子牛や子羊の命を喰らって「うまい」と言いながら、イルカの囲い込み漁だけを残酷と感じる
感性こそ疑わしい。
世界動物園水族館協会が本当に問題にしているのは、イルカを食の対象として位置づけている
ことそれ自体ではないか。イルカは頭がよくて人懐っこくてかわいい。だから食に対象にしてはい
けない。それが本音ではないか。
でも、このことは公言できない。なぜなら、この観点は生命に対する差別、さらには人種に対する
差別を顕在化させる観点だからだ。頭が悪くて、人懐っこくなくて、かわいくない。そういう動物だっ
たら、大いに食べていい。その「調達方法」をいちいち問題にするまでもない。そういう動物を、そう
いう人に入れ替えると、しっかり人種差別の思想に繋がる。
世界動物園水族館協会に「どこが残酷なのか具体的に指摘してほしいと何度も申し上げたが、回
答はなかった」のは当然だ。
回答できないなら、日本側の言い分を認めればいい。それをしないどころか、日本動物園水族館
協会の会員資格を停止する、と開き直り、恫喝している。これが世界動物園水族館協会だ、これが
世界だ。
≪海外メディアから「今回の問題で日本が失ったもの、得たものは」と問われると、「イルカの入手
が困難になり、日本の水族館にとって極めて不利になった。一方で国民の関心が非常に高いこと
も分かったので期待に応えたい」と話した。≫
海外メディアは世界動物園水族館協会の横暴を報道できるのだろうか。