鹿児島地裁が警察と検察を断罪

毎日新聞 5月15日(金)11時8分配信

≪2003年4月の鹿児島県議選を巡る選挙違反事件(志布志事件)で無罪が確定した元被告
ら17人が、国と県に2億8600万円の賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁は15日、双方に総
額5980万円の支払いを命じる判決を言い渡した。吉村真幸裁判長(川崎聡子裁判長代読)
は「自白を強要した警察の取り調べは違法。漫然と公判を継続した検察にも合理性はない」と
違法性を認めた。≫

吉村真幸裁判長(川崎聡子裁判長代読)ということは、裁判をしたのは吉村裁判長だけど、判
決言渡しのときはよその異動になっているので、川崎裁判長が代読したということです。

吉村真幸裁判官の経歴はすごいです。超エリートコースです。
吉村裁判官は、鹿児島地裁に来る前、横浜地裁にいましたが1年間だけです。こんな短期間
の人事はふつうありません。そして、志布志国賠訴訟の判決を書き上げたら、すぐに東京高裁
に戻っています。
最高裁は、志布志国賠訴訟事件のためだけに、この裁判官を鹿児島地裁に送り込んだので
す。最高裁は確信犯的にこの裁判に取り組んでいます。
県、国が控訴するということは、警察庁最高検最高裁の確信犯的対応に真っ向から対決
姿勢をとるということです。

≪同種事件で警察(県)側に賠償を命じた裁判としては、強姦(ごうかん)・強姦未遂事件で男
性の再審無罪が確定した富山県の「氷見(ひみ)事件」を巡る判決(今年3月)がある。起訴・
公判を担当する検察(国)の賠償責任が認められるのは異例。≫

検察が警察の言いなりになっている現実が断罪されたのです。検察捜査も本当にひどかった
ということです。

≪最大の争点は捜査の適法性。初当選した中山信一元被告側が計4回の会合で現金計191
万円を渡して買収したという起訴内容だったが、アリバイがあり1回目の会合に参加できない
はずの元被告が含まれていることから、判決は「裏付けに乏しく、会合が存在していたとは考
えられない。虚偽の自白」と判断した。≫

この部分が最大の争点?

≪県警の取り調べについて、逮捕を予告したり、買収の金額について供述をどう喝や誘導で
強要したりしており「任意捜査の限度を超えている。社会通念上許されない」として違法性を
認めた。検察に関しては、全被告が否認に転じても公判を継続した点を問題視し、注意義務
違反を認定した。≫

判決は、警察官の仕事の仕方を問題にしていますが、ふだん裁判所は警察官の仕事ぶりを
問題とする国賠訴訟で悉く警察側を勝たせ、散々警察(官)に甘くしているのです。
だから、
警察組織も警察官も、これも大丈夫、あれも大丈夫、とどんどん悪質さが増してしまうのです。

「検察に関しては、全被告が否認に転じても公判を継続した点を問題視し」というまとめ方は
意味不明です。そうなっても、犯罪の成立を立証できる証拠があれば公判を維持することは
問題ないはずです。

 ▽井上順夫弁護団長の話 違法性を認めた一定の評価ができる判決。

弁護団長が「一定の評価ができる」という言い方をしているのは、不満な点がかなりあるの
もしれません。原告が控訴することもあり得るのでしょうか。

 ▽鹿児島県警の今村順二首席監察官の話 判決内容を検討し適切に対応する

「適切に対応」ということなら、最初から争うべき裁判ではなかったのではないでしょうか。

 ▽鹿児島地検の平野大輔次席検事の話 関係機関、上級庁と協議して対応を検討したい。

関係機関と協議?「関係機関」は警察庁ですかね。だとすると、違法捜査を進めていたときと
同じ構図、そのときの腐れ縁はまだ続いているということでしょうか。