秘密保護法に関する質問事項(4)

(適性評価の結果等の通知)
十三条 
4 行政機関の長は、第一項の規定により評価対象者に対し特定秘密の取扱いの
業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められなかった旨を通知する
ときは、適性評価の円滑な実施の確保を妨げない範囲内において、当該おそれが
ないと認められなかった理由を通知するものとする。ただし、当該評価対象者が
あらかじめ当該理由の通知を希望しない旨を申し出た場合は、この限りでない。

【質問事項】
1 「適性評価の円滑な実施の確保を妨げない範囲内において、当該おそれがない
と認められなかった理由」とは、どの程度の記載を考えているのか。抽象的過ぎる
と、理由告知制度を設ける意味がない。
2 「あらかじめ」に限定してしまうと、適格と判断されたいと思う者は、必然的
に、あらかじめ当該理由の通知を希望しない旨を申し出ないことになるのではないか。
3 理由の通知を希望しない旨の申出を事前に限定しなければならない理由はなにか。
事前放棄しない者については、その時点ですでに事実上、不適格の評価がなされる
という疑問を抱かれることにならないか。不適格という結果が出て初めて理由を
確認したいと思うようになるのが自然であることからすれば、爾後でもよいとして
もよいのではないか。
4 事業者以上に行政機関が事業者の従業員の個人情報を大量に有している関係は
異常である。事業者が雇っている従業員による漏えい防止を、行政機関が主体と
なって行うことにする本制度では、その徹底を期するがゆえに際限なく調査を行なう
か、逆に、ごくごく形式的なものになってしまったり恣意的な運用をする者が出て
きたりする可能性があるのではないか。現在の自衛隊法では、これらの問題は契約
事項として事業者側の責任において行われることになっている。制度設計としては
こちらの方が合理的なのではないか。不合理だとすれば、どのように不合理なのか。

(行政機関の長に対する苦情の申出等)
第十四条 評価対象者は、前条第一項の規定により通知された適性評価の結果その
他当該評価対象者について実施された適性評価について、書面で、行政機関の長に
対し、苦情の申出をすることができる。

【質問事項】
1 「当該評価対象者について実施された適性評価について、・・・苦情の申出を
することができる。」ということは、調査事項、調査の実態等について苦情の申出
ができるということか。
2 苦情の申出にはだれが対応するのか。

2 行政機関の長は、前項の苦情の申出を受けたときは、これを誠実に処理し、処理
の結果を苦情の申出をした者に通知するものとする。

【質問事項】
「処理の結果を・・・通知する」とあるので、結論だけがごく簡単に書かれた通知に
止まるように読めるが、そうか。申出者に一定程度理解してもらおうと考えるので
あれば、結論に至る理由説明をある程度した方がよいのではないか。

3 評価対象者は、第一項の苦情の申出をしたことを理由として、不利益な取扱いを
受けない。

【質問事項】
1 「不利益な取扱い」とはどのようなことを指すのか。
2 「不利益な取扱いを受けない。」の実効性を確保するにはどのようにすればよいか。

(適性評価に関する個人情報の利用及び提供の制限)
第十六条 行政機関の長及び警察本部長は、特定秘密の保護以外の目的のために、
評価対象者が第十二条第三項(前条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)
の同意をしなかったこと、評価対象者についての適性評価の結果その他適性評価の
実施に当たって取得する個人情報(生存する個人に関する情報であって、当該情報に
含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができる
もの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる
こととなるものを含む。)をいう。以下この項において同じ。)を自ら利用し、又は
提供してはならない。ただし、適性評価の実施によって、当該個人情報に係る特定の
個人が国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十八条各号、同法第七十五条
第二項に規定する人事院規則の定める事由、同法第七十八条各号、第七十九条各号
若しくは第八十二条第一項各号、検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第二十条
各号、外務公務員法(昭和二十七年法律第四十一号)第七条第一項に規定する者、
自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第三十八条第一項各号、第四十二条各号、
第四十三条各号若しくは第四十六条第一項各号、同法第四十八条第一項に規定する場合
若しくは同条第二項各号若しくは第三項各号若しくは地方公務員法(昭和二十五年法律
第二百六十一号)第十六条各号、第二十八条第一項各号若しくは第二項各号若しくは
第二十九条第一項各号又はこれらに準ずるものとして政令で定める事由のいずれかに
該当する疑いが生じたときは、この限りでない。

【質問事項】
1 適性評価のための調査(12条4項)を他の行政機関に委託することができるのか。
2 できるとすると、調査情報は、一旦、受託者に集まる。それを委託した行政機関に
提供することになるが、データで管理している情報であれば、受託者に情報が残る。
ここでの利用制限に関する規定がない。どうするのか。

2 適合事業者及び適合事業者の指揮命令の下に労働する派遣労働者を雇用する事業主は、
特定秘密の保護以外の目的のために、第十三条第二項又は第三項の規定により通知された
内容を自ら利用し、又は提供してはならない。

【質問事項】
 不適格になったら、適合事業者としては、そのことだけで労働者を不利益に扱うことは
大いにあり得るのではないか。そうさせないための実効性ある方法とは何か。

(権限又は事務の委任)
第十七条 行政機関の長は、政令(内閣の所轄の下に置かれる機関及び会計検査院
あっては、当該機関の命令)で定めるところにより、この章に定める権限又は事務を
当該行政機関の職員に委任することができる。

【質問事項】
1 行政機関内部だけならばともかく、民間企業の従業員、派遣労働者について個別の
調査を行なうことを予定しているから、この場合、当該行政機関の職員だけで対応できる
のか。
2 そもそもどこの行政機関の職員にも十分かつ的確な情報収集能力が揃っているのか。
揃っているという建前だけでは、実際に正確な情報を集積することはできないのでは
ないか。

第六章 雑則
(特定秘密の指定等の運用基準等)
第十八条 政府は、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な
運用を図るための基準を定めるものとする。

【質問事項】
1 行政実務では実際に存在する秘匿性の高い情報について統一的な基準あるのか。
2 基本的な事項は、法律で規定すべきではないか。

(国会への報告等)
第十九条 政府は、毎年、前条第三項の意見を付して、特定秘密の指定及びその解除
並びに適性評価の実施の状況について国会に報告するとともに、公表するものとする。

【質問事項】
 「報告」はどのようなものを想定しているか。統計処理した数字のようなものだけだと、
国会への報告は単なる儀式にしかならない。国会に報告すること自体にも一定の監視
機能を持たせるために、報告内容は国会議員が検討する意味があるよう、相当程度に
具体的なものにすべきではないか。

(関係行政機関の協力)
第二十条 関係行政機関の長は、特定秘密の指定、適性評価の実施その他この法律の
規定により講ずることとされる措置に関し、我が国の安全保障に関する情報のうち特に
秘匿することが必要であるものの漏えいを防止するため、相互に協力するものとする。

【質問事項】
1 「我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものの
漏えいを防止するため」とは、どのような意味か。
2 2項1号ないし7号に関する詳しい最新情報を集めようとすれば、日常生活に
ついて日常的に監視し続ける必要がある。当該行政機関の職員(17条)でも対応し
切れないであろう。諸外国の例では、連邦人事局(アメリカ)、国防調査庁・外務省
(イギリス)、連邦憲法擁護庁(公安警察)・軍防諜局(ドイツ)、内務省中央国内
情報局(フランス)などに委託されている。
我が国では、警察庁公安警察)に委任
することになるのではないか。
3 適合事業者は自社の従業員についてこのような監視がされることを許容している
のか。

政令への委任)
第二十一条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この
法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

【質問事項】
 どのような事項を政令事項として想定しているのか。