秘密保護法に関する質問事項(5)

第七章 罰則

【質問事項】
1 捜査方法や刑事裁判手続について、警察庁最高検最高裁で検討している
のか。しているとすれば、どのようになっているか。
2 既遂は「漏えい」であって漏えい後の公表や報道ではない。外務省機密漏えい
事件でも犯罪行為は漏えいしたことであって、新聞に曖昧に書いたことや、国会の
審議に出したことではない。例えば、同じ役所の中で、取扱業務従事者以外の者が
当該役所内において当該役所の業務のために研究するために特定秘密を管理場所
から持ち出した場合、24条1項違反が問題になり得る(但し、目的犯にしたこと
で、処罰対象にならない可能性はある。)。これを犯罪として問題にするか、適正
管理の逸脱の問題とするか。犯罪として問題にすると、現場を保存する必要があり、
それをしないと証拠隠滅の問題が起こる。役所内が捜査対象になることから業務へ
の支障が起こるのではないか。また、犯罪でないから軽視してよいという事態では
ない。権限者(取扱業務従事者)以外の者が情報を取得できる管理環境に問題が
ある。罰則の適用よりも情報管理の適正化こそを重視すべきだと考える。犯罪捜査
と適正管理の関係をどのように考えるのか。
3 既遂については、インターネット上に出てしまったような場合で、だれにでも
知られてしまう環境になっている場合と、漏えいの相手方に当該情報が渡っている
だけで公表されていない場合があり得る。前者については検察官は当該情報を公開
法廷に顕出して被疑者・被告人は実質秘性を争うことになるのか。後者については
警察・検察・令状裁判官は当該特定秘密を逮捕状や勾留状の被疑事実に記載するの
か。起訴後の裁判手続はどうなるのか。
4 未遂、独立教唆、共謀などの場合には、漏えいの結果は生じていない。この場合、
警察・検察・令状裁判官は当該特定秘密を逮捕状や勾留状の被疑事実に記載するのか。
起訴後の裁判手続はどうなるのか。

第二十三条 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定
秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び
千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後において
も、同様とする。
2 第四条第五項、第九条、第十条又は第十八条第四項後段の規定により提供された
特定秘密について、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者が
これを漏らしたときは、五年以下の懲役に処し、又は情状により五年以下の懲役及び
五百万円以下の罰金に処する。第十条第一項第一号ロに規定する場合において提示
された特定秘密について、当該特定秘密の提示を受けた者がこれを漏らしたときも、
同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
4 過失により第一項の罪を犯した者は、二年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に
処する。
5 過失により第二項の罪を犯した者は、一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に
処する。

【質問事項】
1 「過失」の行為類型としてどのようなことを想定しているのか。
2 漏えい後に過失犯として処罰するよりも、漏えい前に適正管理の実行確保とこれ
に対応する管理義務違反を設定した方が情報漏えいの防止に有効なのではないか。

附則

(指定及び解除の適正の確保)
第九条 政府は、行政機関の長による特定秘密の指定及びその解除に関する基準等が
真に安全保障に資するものであるかどうかを独立した公正な立場において検証し、
及び監察することのできる新たな機関の設置その他の特定秘密の指定及びその解除の
適正を確保するために必要な方策について検討し、その結果に基づいて所要の措置を
講ずるものとする。

【質問事項】
1 保全監視委員会の準備の進捗状況
2 独立公文書管理監の準備の進捗状況
3 情報保全監察室の準備の進捗状況
4 特定秘密が公的情報の一部を構成するという位置付けであり、特定秘密でなかった
情報を特定秘密に指定したり、逆に指定解除をしたりという関係性があることからする
と、特定秘密に限らない公的情報全体についての管理組織をつくるべきではないのか。


別表(第三条、第五条―第九条関係)
一 防衛に関する事項
イ 自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究
ロ 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報
ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ 防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究
ホ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物の種類又は数量
ヘ 防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法
ト 防衛の用に供する暗号
チ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階
のものの仕様、性能又は使用方法
リ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階
のものの製作、検査、修理又は試験の方法
ヌ 防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途(ヘに掲げるものを除く。)

【質問事項】
1 現在はイ乃至ヌの各項目についてどのような類型の情報があるのか。
2 防衛省保有する情報はすべて公文書管理法3条の適用を受けないという理解で
よいか。同条の規定の改正は必要ないのか。

二 外交に関する事項
イ 外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命
及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの
ロ 安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出若しくは輸入の禁止その他の措置
又はその方針(第一号イ若しくはニ、第三号イ又は第四号イに掲げるものを除く。)
ハ 安全保障に関し収集した国民の生命及び身体の保護、領域の保全若しくは国際
社会の平和と安全に関する重要な情報又は条約その他の国際約束に基づき保護する
ことが必要な情報(第一号ロ、第三号ロ又は第四号ロに掲げるものを除く。)
ニ ハに掲げる情報の収集整理又はその能力
ホ 外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号

【質問事項】
 1条の「安全保障」と同じ定義で(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して
国家及び国民の安全を保障することをいう。)よいのか。異なるとすれば、どの
ような内容として理解すればよいか。

三 特定有害活動の防止に関する事項
イ 特定有害活動による被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「特定
有害活動の防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究
ロ 特定有害活動の防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な
情報又は外国の政府若しくは国際機関からの情報
ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ 特定有害活動の防止の用に供する暗号

【質問事項】
1 ここで規定されている情報についても、「我が国の安全保障(国の存立に関わる
外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)
に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるもの」に該当するという理解で
よいか。
2 「特定有害活動」はいわゆるスパイ活動に当たるものと説明されているが、通常、
イメージするスパイ活動とは著しく異なる。「特定有害活動」の定義に至った経緯は
どのようなものか。
3 ロによれば、外国政府や国際機関と情報交換することを想定していることが
伺われるが、そうだとすれば、スパイ活動に関する定義は一致している必要があると
思われるが、「特定有害活動」は諸外国のスパイ活動の定義と合致しているのか。
4 「特定有害活動による被害の発生若しくは拡大」というのは、具体的にどの
ような状況を指すのか。
5 「防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究」というのは、具体
的にどのような状況を指すのか。
6 「特定有害活動の防止に関し収集した」というのは、だれがどこから収集して
くるのか。
7 「情報の収集整理又はその能力」というのは、具体的にどのようなことを指す
のか。

四 テロリズムの防止に関する事項
イ テロリズムによる被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「テロ
リズムの防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究
ロ テロリズムの防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報
又は外国の政府若しくは国際機関からの情報
ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ テロリズムの防止の用に供する暗号

【質問事項】
1 ここで規定されている情報についても、「我が国の安全保障(国の存立に関わる
外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)
に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるもの」に該当するという理解で
よいか。
2 国際テロだけでなく、国内テロを含んでいるのか。後者は国内の治安の問題で
あるから、極力国民に問題状況を広報して注意喚起し、テロ集団の形成・拡大を阻止
するということで対処すべき問題ではないか。
3 ロによれば、外国政府や国際機関と情報交換することを想定していることが
伺われるが、そうだとすれば、「テロリズム」に関する定義は一致している必要が
あると思われるが、諸外国の定義と合致しているのか。
4 「テロリズムによる被害の発生若しくは拡大」の危険性は日本においてあるのか。
あるとすれば、どのような事実から判断できるのか。
5 「防止のための措置又はこれに関する計画若しくは研究」というのは、具体的に
どのような状況を指すのか。
6 「テロリズムの防止に関し収集した」というのは、だれがどこから収集してくる
のか。
7 「情報の収集整理又はその能力」というのは、具体的にどのようなことを指す
のか。

以上
事務局の回答内容を見た上で、必要な質問があれば、さらに質問を行う。
情報管理を法制度として合理的に行おうとする以上、曖昧な部分は極力少なく、小さく
する必要がある。ましてや、実情と法制度が乖離するようなことは、絶対にあっては
ならない。