秘密保護法に関する質問事項(2)

第三章 特定秘密の提供

【質問事項】
 6条以下では、提供先に地方自治体を予定した規定がない。地方自治体に
提供するときは、常に秘密指定を解除することになるということか。自治
業務の側からすれば、住民の生命・安全・生活を守る観点から、自治体業務に
重大な支障を及ぼすような事項については、できるだけ早く連絡されたいと
考えるが、その点は特に問題はないのか。

第七条 警察庁長官は、警察庁保有する特定秘密について、その所掌事務の
うち別表に掲げる事項に係るものを遂行するために都道府県警察にこれを利用
させる必要があると認めたときは、当該都道府県警察に当該特定秘密を提供
することができる。

【質問事項】
 この条文でいう「別表に掲げる事項」とは、別表の一(防衛に関する事項)
防衛省、二(外交に関する事項)は外務省に関する事項と考えられるから、
実際に警察庁から都道府県警察に提供される情報は、別表の三(特定有害活動)
と四(テロリズムの防止に関する事項)に関するものという理解でよいか。

第八条 特定秘密を保有する行政機関の長は、その所掌事務のうち別表に掲げる
事項に係るものを遂行するために、適合事業者に当該特定秘密を利用させる特段
の必要があると認めたときは、当該適合事業者との契約に基づき、当該適合
事業者に当該特定秘密を提供することができる。ただし、当該特定秘密を保有
する行政機関以外の行政機関の長が当該特定秘密について指定をしているとき
(当該特定秘密が、第六条第一項の規定により当該保有する行政機関の長から
提供されたものである場合を除く。)は、当該指定をしている行政機関の長の
同意を得なければならない。

【質問事項】
 「特段の必要」とはどのような事情が想定されるか。

第九条 特定秘密を保有する行政機関の長は、その所掌事務のうち別表に掲げる
事項に係るものを遂行するために必要があると認めたときは、外国の政府又は
国際機関であって、この法律の規定により行政機関が当該特定秘密を保護する
ために講ずることとされる措置に相当する措置を講じているものに当該特定秘密
を提供することができる。ただし、当該特定秘密を保有する行政機関以外の行政
機関の長が当該特定秘密について指定をしているとき(当該特定秘密が、第六条
第一項の規定により当該保有する行政機関の長から提供されたものである場合を
除く。)は、当該指定をしている行政機関の長の同意を得なければならない。

【質問事項】
1 特定秘密を外国政府又は国際機関に提供する場合についての手順を規定した
ものであるが、提供先に求められる条件は、「この法律の規定により行政機関が
当該特定秘密を保護するために講ずることとされる措置に相当する措置を講じて
いる」こととなっている。この条件を充たしていることは、実務上、どのように
確認するのか。
2 確認できないときは、提供を拒否するのか。

(その他公益上の必要による特定秘密の提供)
第十条 第四条第五項、第六条から前条まで及び第十八条第四項後段に規定する
もののほか、行政機関の長は、次に掲げる場合に限り、特定秘密を提供するもの
とする。
一 特定秘密の提供を受ける者が次に掲げる業務又は公益上特に必要があると
認められるこれらに準ずる業務において当該特定秘密を利用する場合(次号から
第四号までに掲げる場合を除く。)であって、当該特定秘密を利用し、又は知る者
の範囲を制限すること、当該業務以外に当該特定秘密が利用されないようにする
ことその他の当該特定秘密を利用し、又は知る者がこれを保護するために必要なもの
として、イに掲げる業務にあっては附則第十条の規定に基づいて国会において定める
措置、イに掲げる業務以外の業務にあっては政令で定める措置を講じ、かつ、我が国
の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき。

【質問事項】
1 「イに掲げる業務にあっては附則第十条の規定に基づいて国会において定める
措置」について、現在の検討状況はどうなっているか。
2 「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき」という
条件は、特定秘密に該当しなくなったときという意味になるのか。そうでないと
すれば、どのような状況になったときを指すのか。

2 警察本部長は、第七条第三項の規定による求めに応じて警察庁に提供する場合の
ほか、前項第一号に掲げる場合(当該警察本部長が提供しようとする特定秘密が同号
ロに掲げる業務において利用するものとして提供を受けたものである場合以外の場合
にあっては、同号に規定する我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと
認めることについて、警察庁長官の同意を得た場合に限る。)、同項第二号に掲げる
場合又は都道府県の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該
都道府県の条例(当該条例の規定による諮問に応じて審議を行う都道府県の機関の
設置について定める都道府県の条例を含む。)の規定で情報公開・個人情報保護審査会
設置法第九条第一項の規定に相当するものにより当該機関に提示する場合に限り、特定
秘密を提供することができる。

【質問事項】
都道府県の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該都道府県
の条例(当該条例の規定による諮問に応じて審議を行う都道府県の機関の設置について
定める都道府県の条例を含む。)の規定で情報公開・個人情報保護審査会設置法第九条
第一項の規定に相当するものにより当該機関に提示する場合」は、都道府県の情報公開
・個人情報保護条例の不服申立手続に関して規定したものである。都道府県警察が実施
機関になっている関係から、都道府県警察が保有する情報はこれらの条例に基づいて
情報公開請求、個人情報開示請求ができる。条例では、全部又は一部不開示処分について
不服申立ができる旨の規定を設けている。そして、条例では情報公開・個人情報保護
審査会の裁量でインカメラができる旨を規定している。これをそのまま許容してしまうと、
1項3号(情報公開・個人情報保護審査会設置法(平成十五年法律第六十号)第九条
第一項の規定により情報公開・個人情報保護審査会に提示する場合)のような制限がない
ことになり、国の制度と都道府県の制度でバランスを失することになる。そこで、「条例
の規定で情報公開・個人情報保護審査会設置法第九条第一項の規定に相当するものにより
当該機関に提示する場合に限り」という制限をつけて、国の制度と同じ制限にした。この
ような理解でよいか。

第四章 特定秘密の取扱者の制限

第十一条 特定秘密の取扱いの業務は、当該業務を行わせる行政機関の長若しくは当該
業務を行わせる適合事業者に当該特定秘密を保有させ、若しくは提供する行政機関の長
又は当該業務を行わせる警察本部長が直近に実施した次条第一項又は第十五条第一項の
適性評価(第十三条第一項(第十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定に
よる通知があった日から五年を経過していないものに限る。)において特定秘密の取扱い
の業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者(次条第一項第三号又は
第十五条第一項第三号に掲げる者として次条第三項又は第十五条第二項において読み
替えて準用する次条第三項の規定による告知があった者を除く。)でなければ、行っては
ならない。ただし、次に掲げる者については、次条第一項又は第十五条第一項の適性評価
を受けることを要しない。
一 行政機関の長
二 国務大臣(前号に掲げる者を除く。)
三 内閣官房副長官
四 内閣総理大臣補佐官
五 副大臣
六 大臣政務官
七 前各号に掲げるもののほか、職務の特性その他の事情を勘案し、次条第一項又は
第十五条第一項の適性評価を受けることなく特定秘密の取扱いの業務を行うことができる
ものとして政令で定める者

【質問事項】
1 1号から7号までの者は適性評価を受けないものと規定されているが、1号から
6号の地位につくことから、論理必然的に適性評価を不要とすることにはならない。
前者は政治的判断であり、後者は制度化された基準への適合性である。適性評価を受ければ
適格性を欠くと評価される者が1号から6号の地位に着くということはあり得ないでは
ない。どのように解釈すればよいのか。
2 7号は、1号から6号以外の者についても、「職務の特性その他の事情を勘案し」て
政令で適性評価を受けなくてよい者を定めることができるとしている。実際の政治活動の
必要という観点からすれば必要な例外であるが、「職務の特性その他の事情」が適性評価
を不要とする十分な理由を備えていなければならないとすると、ほとんど7号による例外
を認めないということになりかねないのではないか。