<旅行業法>ボランティアバスは違反 観光庁が是正通知の???

毎日新聞 6月11日(土)15時0分配信
NPOなどがボランティアを被災地にバスで派遣する「ボランティアバス」で、公募した
参加者から参加費を直接集めるのは実費だけでも旅行業法違反として、観光庁が5月末、業
者への委託など是正を求める通知を全都道府県に出していたことが分かった。ボランティアバ
スは東日本大震災以降、全国で広がり、事実上“黙認”されてきたが、一転して厳格化の方針
を打ち出した。多くは法に抵触するとみられ、熊本地震への派遣を取りやめる動きも出ている。≫

「公募した参加者から参加費を直接集めるのは実費だけでも旅行業法違反」
そうなのか。
「業者への委託など是正を求める通知」
ということは、だれかから、「あれ、旅行業法違反じゃないの?」という指摘があったということ。
でも、東日本大震災以降、“黙認”されてきたってわけ?
知らなかった。

≪旅行業法は主催者が報酬を得て運送や宿泊を行う場合、国や都道府県への事前登録を義
務づけている。同法の施行要領では、旅行者から金銭を受け取れば、「報酬」と認定される。≫

旅行業法2条1項では、「この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業
(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理
して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。」と規定している。
「報酬」となっているのだから、バス代だけ、バス代・宿泊費の実費だけを受け取って、その全
額をバス会社、宿泊先に渡すのであれば、集金役の人の報酬はゼロ。だから、旅行業法2条
1項には違反しないはずだ。

ところが、だ。

≪通知は5月25日付で、「登録を受けていないNPO社会福祉協議会が主催者となり、参加
代金を収受してボランティアツアーを実施する事例が見受けられる」と参加費の徴収を問題視
している。
主催団体に対し、旅行業者として都道府県や国から登録を受ける▽業者にツアー自
体や参加費の徴収を委託する−−などを指導するよう都道府県に求めた。≫

いやいや、無料というわけには行かないでしょう。

観光庁観光産業課によると、今年5月、熊本地震の被災地に向かうボランティアバスを巡
り、各県や同庁に「旅行業法に抵触しているのではないか」との電話が多数あったことを受
けた対応という。同課は「参加者を公募し、参加費を収受した時点で旅行業法に抵触する」
とし、主催団体が利益を得ない場合も徴収は認められないという。≫

各県や観光庁に電話が多数・・・ホント?
組織的だ。こういうことで告げ口するのは旅行業法に精通している人たちに違いない。

違法にならないのは参加費を徴収しない、または公募せず顔見知りだけで同乗−−の場
合。
影響は既に出ており、福岡県のNPOは5月中旬、熊本地震のボランティアバスについて、
同県から「旅行業法違反では」と指摘を受けた。「誤解を招かないように」と3000〜4000円
だった参加費を無料にした。大阪府などの団体は熊本への派遣を中止したという。≫

違法にならないのは参加費を徴収しない。
これは兵糧攻めだ。

公募せず顔見知りだけで同乗もOK。顔見知りだって、例えば町内会なら数十人にもなる。それで、交通費と宿泊費を集めて行くの
はいい。顔見知りが数グループ集まってというのはどうか。これはダメ?
顔見知りかどうかって、どういう基準なんだ。概して規模が小さい。そうかもしれない。でも、
規模が小さいかどうかで、集めた交通費や宿泊費の法的性質(一時預り金)が変わるわけ
じゃない。

記事によると、旅行業法には旅行業法施行要領というものがあって、それで「報酬」とされて
いるらしい。どういうことか?

旅行業法施行要領には旅行業法2条1項の「報酬」について以下のような規定がある。
(1)事業者が法第2条第1項各号に掲げる行為を行うことによって、経済的収入を得ていれ
 ば報酬となる。
(2)企画旅行のように包括料金で取引されるものは、旅行者から収受した金銭は全て一旦
 事業者の収入として計上されるので
、報酬を得ているものと認められる。
(3)行為と収入との間には直接的な対価関係がなくても、以下に示すような相当の関係があ
 れば、報酬を得ていると認められる。
 (例1)旅行者の依頼により無料で宿を手配したが、後にこれによる割戻しを旅館から受け
  ている場合
 (例2)留学あっせん事業等、旅行業以外のサービス事業を行う者が、当該サービスに係る
  対価を支払う契約の相手方に対し、その見返りとして無料で運送又は宿泊のサービスを
  手配している場合

(1)で、旅行業法の「報酬」が「経済的収入」になっている。「報酬」より定義の範囲が広がっ
ている感じがする。「報酬」だと金銭だけを指しているように読めるので、「経済的収入」とす
ることで、金銭に限らないという説明をしているつもりなのかもしれない。これは脱法的な旅
行業を排除する
ということで、悪くはないだろう。「収入」という言葉からすれば、その利益を
収入として税務申告のときに計上すべきかどうかという観点から判断してよいのだろう。そう
だとすれば、数時間、数日間、預かるだけであれば、「収入」とは言えないのではないか。

(2)では、「企画旅行のように包括料金で取引されるものは、旅行者から収受した金銭は全
て一旦事業者の収入として計上されるので」としているので、「包括料金」になっていなけれ
ば「報酬」に当たらない。
「包括料金」とは何か。「企画旅行のような」とあるが、「企画旅行」
であっても、交通費だけということもある。
交通費と宿泊費だけということもある。これは個
別ではないのか。これでも「包括」なのか。「旅行者から収受した金銭は全て一旦事業者の収入として計上される」とあるが、預り金であ
っても「収入」になるのか。
「収入として計上されるので、報酬を得ているものと認められる」と
いうのは詭弁ではないだろうか。

(3)は「報酬」に当たるとしていいだろう。

(1)と(3)だけなら、まあそうかなあなのだが、(2)がどうも???だ。

偉そうに、ああだこうだ言っているけれど、これは法律の規定ではない。旅行業法施行令(昭
和46年政令第338号)の規定でも、旅行業法施行規則(昭和46年運輸省令第61号)の規定
でもない。施行令や規則は、法律の規定をより細かく規定している関係にあるのだけれど、施
行要領はちがう。まあこんな感じでいいんじゃないか、と役人が作っている解釈運用基準に過
ぎない。
役人の仕事に大手旅行業者の圧力が大きく影響しているってことじゃないだろうか。
NPO関係者は「被災地のボランティア活動を続けるためにも何らかの支援策が必要だ」と
話している。≫

このおかしな要綱をなんとかすればいいのではないか。