『マイナンバーと口座ひも付け法案』の怪!!

マイナンバーと口座ひも付け 今国会に法案 自民方針、情報流出の懸念≫

2020年5月21日 朝刊  東京新聞

 

自民党は二十日、マイナンバーと預貯金口座をひも付けして管理し、緊急時の現金給付の際に活用するための議員立法を今国会に提出する方針を固めた。新型コロナウイルス感染拡大で、全国民に一律十万円を支給する「特別定額給付金」では、マイナンバーカードを使った電子申請の混乱や遅れが相次いでいることを受け、今後新たな現金給付手続きが必要な場合の迅速化を図るとしているが、識者からは個人情報の流出などに懸念の声が上がる。≫

 

どうして現場の自治体が混乱しているこの時期に与党の国会議員からこんな法案が出て来るかなあ。全国の市区町村から要請があったとはとても思えない。現場(自治体)に負担がかかる仕組みを国で作る場合、現場となる自治体にはっきりしたメリットがなければ駄目だ。その点、マイナンバー制度には、運用する自治体に負担がかかるばかりでメリットらしいメリットがない。法定受託事務だから、「必要経費は一応国が出すけどね」という程度ことだから、特に経済的に貧しい自治体してみれば、「できればほかのことでお金が欲しいんですけど」なのだ。そういう実情を全国各地から選ばれてきているはずの国会議員が知らないとは困ったもんだ。

 

自民党マイナンバー活用プロジェクトチーム(PT)の提言によると、特別定額給付金の振込先として市区町村で登録した金融機関の口座番号や連絡先といった情報を、本人同意を前提にマイナンバーとひも付けて国が登録・管理できるようにする。

 法案の付則には、マイナンバーと口座番号のひも付けの義務化についても検討し、今年中に結論を出すよう明記する。

 PT座長の新藤義孝総務相は「利用者視点に立った観点からの改善が必要。マイナンバーと口座をひもづけるのは長年の課題で、促進すべきだ」と話す。≫

 

給付金の支給を少しでも早めるのだったら、市区町村が口座を把握しているだけでいい。現に今回のことで、市区町村は今後も給付金を送金することがあるかもしれないと考えて、「住民」から振込口座の再利用の同意を得て登録するようにしている。「住民」からすればそれだけで足りる。

 

それを自民党議員は、「特別定額給付金の振込先として市区町村で登録した金融機関の口座番号や連絡先といった情報を、本人同意を前提にマイナンバーとひも付けて国が登録・管理できるようにする」のだという。わけがわからない。個人のメリットが何も見えない。そんなものをどうして国会議員が進めたがるんだ。国会議員自身にはメリットがあるということか。そんなことでこんな制度を作ってもらっては困る。

本人同意を要件にするとしても、同意をとるときには、これこれこういうメリットがあるんですよ、お得でしょう、という説明ができなければ、誰も乗って来ないことは目に見えているではないか。

それにいろいろな事情で口座を変更する人はいくらでもいる。いつ変更するかも本人の都合だ。その都度、本人は口座変更を市区町村の届け出て、市区町村は国に通知するということをしなければならない。本人が届出を忘れることだってある。国に登録していることなんて、それで具体的なメリットを日常的に受けていないかぎり忘れる人は無数に出て来る。今後ますます高齢化社会になることだし。

 

そんなことより、特定の番号の「個人」の口座に世帯家族全員の給付金が入る仕組みこそが問題だ。個人番号制の採用は、行政が個人単位で人々と向き合うことを原則化することを意味している。そうであれば、家族主義よさようなら、世帯単位よさようなら、ついでに戸籍よさようなら、が個人番号制度のあるべき方向性だ。家庭内暴力やDV被害の悪化状況があり、いまは大丈夫な世帯でも次の給付金のときは世帯主に送られては困るという事態になっているかもしれない。その変化は日々どこかで起こっています。個人番号なら個々人の口座に振り込めという制度運用こそ意味があることだ。あ、この場合もマイナンバー制度は直接関係ないけどね。

要は、マイナンバー制度はやっぱりいらないみたいだね、ということなのだ。

 

マイナンバーは社会保障と税、災害対策の三分野で利用されている。

現金給付に活用するためには、新たな法整備が必要となるが、口座番号を連結されることに関しては、個人情報流出の不安や国に資産状況を把握されることへの抵抗感が広がる可能性もある。≫

 

社会保障と税、災害対策の三分野」なんて立法時にマスコミを味方につけるためのお題目でしかなかった。マスコミはみごとにこのお題目に乗っていた。災害時にマイナンバー(カード)が有効に機能するという仕組みがわからない。東日本大震災のような事態になって、自治体も金融機関も社会全体が大混乱に陥っていたら、マイナンバー(カード)制度があっても意味ないでしょ。そういうときの個々人の保護や救済はマイナンバー(カード)のあるなしじゃない。一人の人として保護や救済をすべきかどうかだけの現場にいる人々の判断なのだ。

 

専修大山田健太教授(言論法)は「マイナンバー制度自体が未完の状態で、個人情報のコントロールが実現しているとは言い難い」との懸念を指摘。

マイナンバーカードの普及率は16・4%(十日現在)にとどまっているため、自治体情報政策研究所の黒田充代表は「新型コロナ対応には間に合わない。制度の問題を検証した上で、時間をかけて議論するべき話だ」と話す。≫