死亡届提出後も年金受給

読売新聞 5月1日(金)7時20分配信
≪すでに死亡した親族が生きているかのように装い、遺族が年金を不正受給する詐欺事件が
後を絶たない。≫

未だに起こっているんだ。どうして?

自治体に対する死亡届は提出されているのに、年金事務所側が自治体に確認せず、不正
を見抜けないケースも相次いでいる。日本年金機構は「不正を疑う前提になっておらず、1件
ごとに自治体に確認する人員も確保できない
」と説明するが、関係者からは「連携不足と言わ
れても仕方がない。制度改革が必要だ
」と指摘する声が上がっている。≫

「不正を疑う前提になっていない」。この考え方がまちがっている。
不正は全体の中で少ないかもしれない。でも、不正ができる仕組みなら、いつだれが不正をす
るかわからない。それを防ぐ必要がある、
と考えるべきだ。

そうは言っても、日本年金機構側から年金受給者ひとりひとりの生存確認を市町村に対して常
に問い合わせをするというのは現実的ではないだろう。
市町村には葬儀の前提として死亡届が出されているから、ここと連携すればわかる。「連携不
足」の指摘は当たっている。ということは、わりと最近になって始まったことではなくて、受給開
始年齢の問題があるにしても、前から起こっていたことなのだろう。

「制度改革が必要だ」。ご指摘、ごもっとも。どういう制度改革だ?
マイナンバー制度は解決策になるか?
よく言われることだけど、解決できるだろうか。唯一最善の解決策だろうか。
マイナンバー制度がなくても、年金団体が年金受給者の住所地の市町村に年金給付している
ことを知らせておいて、市町村に年金受給者の死亡届が出たら市町村から年金団体に連絡
する
、という仕組みにしておけば、年金団体は年金受給者の死亡を確実に把握できる。死亡届
を出さないケースは把握できないが、不正はずっと少なくなる。

≪「ばれなかったので、つい続けてしまった。母の年金は生活費に充てた」≫
 死亡した母親名義の遺族厚生年金約120万円を不正受給していたとして無職の男性(68)
が詐欺罪で起訴された。

≪捜査関係者などによると、母親は2003年11月に90歳で死亡。直後に小倉北区役所に死
亡届が出された。しかし、吉松被告は日本年金機構には生存を装うため、年金受給権者現況
届に虚偽の内容を書いて提出していた。年金の受給は続き、母親の死後も計約1000万円が
支払われていたという。≫

1000万円が120万円になっているのは時効ということか。悪質と言えば悪質だ。しかし、こう
いう不正は、少し続けて「大丈夫」という感触を得ると、いつまでも続いてしまうものだ。
そうい
う味を占めないうちに断ち切る必要がある。

この男性は働きに出るべきだったのかもしれない。違った形の経済的支援が必要だったのかも
しれない。制度を合理化すれば、彼は犯罪者にならず、ちがった人生を歩めただろう。
いい仕組みは犯罪者を少なくできる。