「ペスト」と「明日、ママがいない」
久しぶりに手に取った月刊誌「世界」にカミュの「ペスト」の文字をみて、直感的に
読みたくなり、一気に読んだ。
「異邦人」に次ぐ第2作として、1947年6月に発表され、爆発的な熱狂を持って
迎えられたという。それは読み進みながら実感した。
突然、ペストに襲われた都市。そこで暮らしていた人たちはペストにどう向き合った
のか。その内容が如何にも人間の弱さ、強さ、楽観ぶり、無節操ぶりなどなど、あまり
にもリアルなのだ。そして、最後の最後まで辛い現実を突きつけ続け、読者を追い詰め、
安心させてくれない。「これが現実だ!」と。
日テレの番組、「明日、ママがいない」が世の大人たちから総スカンを喰らっている。
そんなにひどいドラマなんだろうか?
昨夜、はじめて、20分くらい観てみた。
確かにこれはリアルな現実をそのまま表わしているのではないと思った。しかし、
ドラマはそういうもんじゃないか。出演している人たちの演技から、いい感じの
メッセージを実感した。出演している人たちは、大人も子どもも、お金になるから仕事と
してしただけなのだろうか。この仕事の中身にはかなりの毒があるけれど、それなりに
社会的な意味がある、と思いながら、役を演じているのではないだろうか。
この番組とは比較にならない、遥かにくだらない番組はいくらでもあるではないか。
この番組を痛烈に批判している人たちは、他の遥かにくだらない番組にも痛烈な批判を
しているのだろうか。番組を中止させたり大幅に修正させようとするのであれば、それ
くらいのバランス感覚と行動力はほしい。
施設出身者の反応をインターネットで読んだ。
その中にこういう書き込みがあった。
「幸せとは何か」施設で暮らしていて幸せと思っている子もいるかもしれない、家庭で
暮らしていて周りから見たら幸せそうでも本当は幸せではないかもしれない。本当のこと
なんて本人たちにしか分かりません。可哀想だ、楽しそうだ、なんて周りが決めること
ではなく本人が分かっている事だと思います。
この番組を作った人たちはそれなりの覚悟をしてこれを作ったはずだ。最後まで我慢
して観る心の広さを持ってもいいのではないだろうか。