そして犯人の弟は自殺した

 『週刊現代』4月26日号の記事に驚いた。
 秋葉原通り魔殺人事件(2008年6月発生)の被告人(最高裁に上告中)
の弟さんが自殺したという記事だ。

 事件直後、『週刊現代』が2週続けて、弟さんの手記を記事にした。
 細かい内容までは覚えていないが、読者の同情を引くことなど全く狙って
いない、軽薄な揚げ足取りを許さない真面目なものだった。事件直後に殺
人犯の弟が週刊誌にこのような手記を出す決断をしたことに驚き、内容に
感動した。
 お兄さんがなぜ暴走したのか。お兄さんの生い立ちの問題点を一緒に育
ってきた弟が率直に書いていた。

 自殺する一週間前に、「加害者の家族というのは、幸せになっちゃいけ
ないんです」「死ぬ理由に勝る、生きる理由がないんです」
。そう語ってい
たという。

 お兄さんの事件で、家族は崩壊。
 父親は辞職後、家に引き篭もり、母親は心のバランスを崩して精神科に
入院。離婚。弟さんは職を転々。

 それでも、弟さんは、やっと自分のことを話せる女性と出合った。お兄さ
んの話をしても、「あなたはあなただから関係ない」と言い切ってくれた。
女性の両親も事情を知りながら、交際を許してくれた。
 ところが、「結婚」という話になった途端、猛反対。親の反対、将来への
不安・・・からか、女性が「あなたが犯人の弟だから」。さらに、「一家揃っ
て異常なんだよ、あなたの家族は」

 弟さんは他人と深く関わることをやめた。

 犯罪者の家族は殺人犯ではない。弟さんにとってお兄さんは、両親が
同じで、一定の時期を一緒に暮らしただけの関係で、犯罪には全く関係
ない。そのような人が、どのような形、内容にせよ、幸せになってはいけ
ないのだろうか。

 被害者家族のことを考え続け、悩み続けながら、人として意味のある生
き方をしようとすることもいけないのだろうか。