これが日本の警察組織に逆らった記者の現実だ!

 元北海道新聞記者、現高知新聞記者の高田昌幸さんの体験記、『真実 新聞が
警察に跪く日』(角川文庫)
が出版された。この内容がすごい。

 『追及・北海道警「裏金」疑惑』(講談社文庫)に詳しく書かれている北海道警裏
金追及もすごかった。デスクだった高田氏は、道警担当の記者たちに道警の裏金
追及の取材をさせていた。記者たちは道警の警察官から嫌われ、取材がしにくく
なる。情報を干される。しかし、そのことよりも、高田氏は、道警の警察官らと日々
顔を合わせている記者こそがこの取材に相応しいと判断する。だからこそ、記者
たちは知り合いの警察官らの人伝で取材を広げて行き、手堅い記事を書き続ける
ことができた。

 本書はその後日談。
 後日談はふつう、のんびりした内容のものだが、これはまったくちがう。
 裏金追及が終わったあと、取材班は解散になり、記者たちはあちこちに散って
行った。若い記者たちは冷遇され、北海道新聞を去って行く者も出た。デスクだ
った高田氏、道警記者クラブのキャップだった佐藤一氏は、元道警幹部から陰に
陽に凄まじい戦いを挑まれる。同僚も会社も道警側と親密な関係になって行った。
そのことを、高田氏も佐藤氏も、名誉毀損訴訟で原告の元道警幹部が隠し録音し
ていた内容を証拠として出て来るまで知らなかった。

 会社、労働組合、裏取引、民事裁判。・・・それから刑事告訴
 10年。

 この国で警察組織に逆らうということがどういうことなのかをリアルに知る最高
の書だ。
 現実を受け容れるか、現実を変えようとするか。どちらを選ぶにしても、現実を
知るべきだ。「知る権利だ」「報道の自由だ」と抽象的な言葉をいくら繰り返した
ところで、この現実は変わらない。

 とにかく知ること。ここから始めるしかない。