認知症:女性7年間の生活費はだれが負担すべきか?

 7年間家に帰れなかった認知症の女性がやっと帰れた。
 7年もかかったのは警察のミス。
 7年で帰れたのはNスペのお陰。
 

 ところで、この7年間。女性の生活費をだれが負担していたか。
 館林市
 2007年10月に女性が保護されてから数週間は一時的な保護措置
として市が費用を全額負担。
 その後、施設を居住先として仮の名前で市が住民票を作成、生活保
護費を支給した。収入や資産、年金給付、親族による援助はいずれも
ないとみなした。「みなした。」というのは、調べようがなかったから、そ
ういう処理をしたということ。後から、「実は資産がありました」「年金給
付がありました」とわかれば、市は出す必要が無い経費を出していたこ
とになるから、「返してね」となる。

 これを今回のケースにそのまま当てはめると、7年間の生活費総額
1000万円超を市から家族に請求することになるかもしれないという。
 毎日新聞の記事(2014年05月15日東京朝刊)によると、いま、この
ことが問題になっているらしい。

 お金のことだけを考えれば、請求される家族の側は、女性の7年間の
生活費を「節約できた」という「事実」があるかもしれない。それなら、
返す(払う)のは当然じゃないか。
・・・が、どうも、釈然としない。

 家族は女性を捨てていたのではない。必死になって探していた。すぐ
に警察に届けて探してもらっている。ところが、届出を受けた警察署か
ら県警本部に伝えたときに名が書きまちがえられてしまった(家族は当
然そのことを知らない。)。
そのため、女性の名前がわかっても照合で
きなかった。

 家族は警察署に女性の姿写真を渡すこともしていた。家族からすれば、
本人がしゃべれなくても、この写真をもとに探してくれれば、間もなく見つ
かるだろう、と考え期待して当然だ。ところが、警察署ではこの情報(写
真)を警察組織全体で共有していなかった!

 一般国民のだれがこんなことを予測できるだろうか。もし、家族が「こ
の写真は周辺の警察署にも配ってもらえるんですよね?」と質問したら、
警察署では「やりません。自分でやってください」と答えたのだろうか。
今でもそう答えるのだろうか。
 これを当たり前と考えるのであれば、市は家族に1000万円超を請求
すればいい。
 しかし、大局的に観たとき、この解決の仕方はまちがっている。

 警察の行政警察活動のひとつとして行方不明者を探すことが入ってい
る(行方不明者発見活動に関する規則)。世の人々も警察をあてにして
いる。ところが、その規則が常識ハズレの杜撰なもの(情報共有のあり
方がわかっていない!)なのに、警察組織の中ではだれもそれを修正し
ようとしないで、そのまま運用してきた。そして、今回の事件だ。
 警察の怠慢は、国民の信頼ないし期待を裏切るものとして、十分に配
慮されるべきだ。

 具体的には、今回の市が負担した費用については、県警・警察庁
「勉強代」として、県(県警)・国(警察庁)が市に払うべきではないか。

 毎日新聞の記事の末尾に、「群馬県内のある行政関係者」のコメント
があった。曰く、「今回のケースを知って『認知症の家族を見捨てても、
行政が金を出して施設が世話をしてくれる』と考える人が出てこないか
心配だ」。

 「群馬県内のある行政関係者」さん。今回のケースはこのような解決
の仕方でいかがですか。