「行方不明者1万人」を考える

 11日、Nスペ「"認知症800万人"時代 行方不明者1万人 
〜知られざる徘徊の実態〜」を観た。

 番組紹介文。
 ≪認知症の人、認知症の疑いがある人が徘徊などで行方不明に…。
 こうした認知症の行方不明者について、NHKが各都道府県の警察本
部に取材した結果、その数は2012年の1年間でのべ9,607人にも
上り、うち351人が死亡、208人が2012年末時点でも行方不明のま
ま、という実態が明らかになった。
 ほとんどの場合、事件でも事故でもないため情報が公開されず、埋も
れ続けてきた認知症の行方不明者。
 番組では、全国各地の警察への取材や自治体アンケートなども行い、
認知症の行方不明者の実態と全体像を初めて明らかにする。
 また、動き出した対策の現場も取材。浮き彫りになる課題を見つめ、
悲劇を少しでも減らすために社会はどうすれば良いのか考えていく。
 去年11月に2夜連続で放送し、大きな反響のあったシリーズ「“認知
症800万人”時代」の第3弾として放送。≫

 番組中、しばらく顔、姿を出していた女性がいた。
 きっと、家族はこの番組を観ているだろう。
 きっと、NHKに、「うちの母だ」「わたしの妻だ」という人が現れるだろ
う、と期待した。

 今朝のNHKニュース。
 期待どおり、女性の夫が名乗りをあげたという。よかった。

 行方不明になって7年間。

 ニュース番組によると、家族はすぐに警察署に届けは出ていた。
 ところが、県警本部に伝えたときに名が書きまちがえられてしまった。
そのため、女性の名前がわかっても照合できなかった。
 行方不明者をみつけることは、家族にとっては事件の解決だけれど、
警察にとってはそもそも事件ではない。ノルマになっていないので、現
場の警察官はがんばらない。ノルマにすべき事件ではないが、事件で
ないと警察官は頑張らないという現状には困ったものだ。

 ノルマの問題を置いておいても、名前さえ誤記されなければ、すぐに
見つかった可能性が高い。

 だから、問題は警察組織全体に行方不明者の情報が伝わるときに
誤記が生じなければいい。

 改善策は簡単。
 交番や警察署で、行方不明者について届出を受けたとき、一旦、紙
に書くのではなく、その場でデータ入力してしまうのだ。そして、データ
入力したものを、行方不明者の申出をしてきた人(大抵は家族か施設
の従業員)に交付し、誤記がないか確認してもらう。こうすれば、誤情
報が警察組織内に広がることはなくなる。
警察組織の中で、ご入力を
した「犯人」やその上司を探して処分する必要がなくなる。
 警察にとっても、行方不明者、行方不明者の家族にとっても、いいこ
とだ。

 警察が、看板倒れではない、本当に国民に感謝される仕事をしよう
という気があるのであれば、こういうことを早急に実行すべきだ。


 それともっともっと重要なことは、家族の痴呆を近所に隠さないこと。
 家族の痴呆問題は、いつどの家族、いつ自分に降りかかって来るか
わからない。恥と思う必要はない。周囲の人より先に体験させてもらっ
てるかな、という問題だと思って、ご近所同士で助け合おう。
 生活空間のあちこちにいる普通の人々の生活の目こそが、一方的
な監視ではない、お互いを助ける力(ヒューマン・ネットワーク)になる。